これが野党の生きる道
同志社大学政策学部教授
立憲民主党幹事長
1962年東京都生まれ。86年同志社大学法学部卒業。大和証券を経て、90年松下政経塾第11期生として入塾。95年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。98年参議院京都選挙区で立候補し、当選。99年民主党に入党。07年「次の内閣」政調会長代理、民主党参院政審会長に就任。当選2回(参院・京都)
参院で主導権を握った民主党は、すでに6本の法案と11本の質問主意書を提出し、国政調査権を盾に、政府・自民党への攻勢を強めている。今国会で最大の焦点とみられていたテロ特措法延長問題も、空母キティホークへの給油をめぐる疑惑などが持ち上がり、政府与党はさらに窮地に追い込まれる展開となっている。まさに民主党は絶好調だったが、予算委員会でテロ特措法の審議がまさに始まろうとする直前、民主党の小沢一郎代表が、10月10日発売の月刊誌『世界』に寄稿した論文が、大きな物議を醸している。
その論文で小沢氏は、民主党が政権をとれば、国連中心主義の立場から、アフガニスタンの治安維持軍に自衛隊を参加させる意思を表明した。小沢氏の主張では、国連決議でオーソライズされた平和活動に参加することは、たとえ武力行使を伴ったとしても憲法に抵触しない、というもの。しかし、この主張が、自衛目的以外の武力行使を排除したこれまでの日本政府の憲法解釈から大きく飛躍したものであることは、誰の目にも明らかだ。
小沢氏の論文が、テロ特措法の延長に反対するばかりで、対案を出さないとの批判をかわす目的で出されたことは理解できる。しかし、民主党が政権をとれば、国連決議があれば武力行使にも参加するとまで踏み込んだことに対しては、民主党内部からも戸惑いの声が上がっている。民主党有利で進むはずだった今国会も、下手をするとこの論文ひとつで民主党が守勢に立たされる可能性も否定できない。また、党内にさまざまな意見を抱える民主党にとっては、これが分裂の火種になる可能性もある。
しかし、参院の政策責任者として、政府を追い詰める先頭に立つ民主党の福山哲郎氏は、政権獲得が見えてきたこの時期だからこそ、あえて民主党内部に対して、小沢氏はこの論文を突きつけたのではないかと読み解く。民主党が抱えている矛盾や内部対立、特に安全保障政策での不一致は、民主党が政権についた際には大きな枷になりかねない。あえて今の時期に各議員に「党の方針に従えるかどうか?」を問い、解散総選挙前に覚悟を求めたのではないかと語る。
実際、小沢氏は10日の記者会見で、論文の内容は党の方針と一致しており、その方針がいやな議員は「離党する以外ない」とまで言いきっている。
福山氏はまた、小沢論文は、小沢氏が次の選挙に自身の政治生命をすべてかけていることの表れではないかとも言う。40年に及ぶ小沢氏の政治生活の中で、最後に自分が理想とする国家像の実現をあの論文に託したと見ることもできる。
週明けからはじまる参議院での国会論戦を前に、参院民主党のキーマン福山氏をゲストに、小沢論文の衝撃や民主党の今後の国会運営などを議論した。