これが野党の生きる道
同志社大学政策学部教授
立憲民主党幹事長
1962年東京都生まれ。86年同志社大学法学部卒業。95年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。大和証券、松下政経塾塾生を経て98年参院初当選(無所属)。99年民主党入党。参院環境委員長、党政調会長代理、外務副大臣、内閣官房副長官などを歴任。11年より参院外交防衛委員長。当選3回(参・京都)。共著に『民主主義が一度もなかった国・日本』。
日本で映画『不都合な真実』が封切られる前日の1月19日、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第四次報告書案の内容が報じられ、向こう100年で地球の平均気温が最大で6.3度上昇する見通しであることが明らかになった。これは第三次報告の5.8度を更に上回るもので、地球温暖化が更に加速の度合いを増していることを示唆している。
同時に、第四次報告書案では、地球温暖化への懐疑論が否定されているという。世界の主要な科学者の集まりであるIPCCが、地球温暖化が人間の経済活動に由来するものであることはもはや疑いの余地はないと断定しているということだ。
地球温暖化への対応が21世紀の世界の主要な課題であることがより鮮明になりつつある中、本来省エネでは世界一の優等生を自負していたはずの日本の対応が後手に回っている。気がつけば自動車のエネルギー効率でもEUに追い越され、太陽光、風力などの自然エネルギーの分野では、長らく環境後進国と揶揄されてきた中国の後塵を拝するまでに落ち込んでいる。
民主党のネクストキャビネット環境副大臣を務め、現在日本の国会で最も熱心に地球環境問題に取り組んでいる議員の一人である福山哲郎氏は、昨年夏にアメリカ、イギリス、スウェーデンを訪問した際に、「世界は京都、そしてポスト京都を念頭に確実に動き始めている」ことを痛感したと言う。そして同時に、日本の対策の遅れに危機感を募らせる。イギリスをはじめとするEU諸国はもとより、京都議定書から離脱し一見温暖化問題に無関心なアメリカや、環境後進国と言われるインドや中国までもが、地球温暖化をめぐる次なる覇権争いのために着々と準備を進めているというのだ。
例えば、アメリカのシンクタンクの中には、自国の政府の温暖化政策を尻目に、世界中の政府の温暖化政策のアドバイザーを務めているところがある。また、連邦レベルでは京都議定書から離脱していても、地方政府レベルでは議定書の基準を大きく上回る温暖化対策を取る都市や自治体が次々と登場している。来週のブッシュ大統領の一般教書で地球温暖化に対する政策転換の可能性が取り沙汰される中、昨日まで地球温暖化も問題児だったアメリカが、一転してこの問題で世界のリーダーシップを取り始める可能性すら出てきている。
一方、スウェーデンの温暖化対策をみると、現在既に基準年(1990年)比でマイナスに転じているにもかかわらず、1990年以来のGDPは25%以上伸びている。温室効果ガスを8.1%も増やしながら、10%の経済成長しか達成できていない日本と実に好対照だ。スウェーデンによって環境政策と経済成長とは相容れないという説は完全に覆されているが、なぜスウェーデンにそれができて日本にはできないのか。教育基本法の議論の中でもたびたび登場したパトリオティズム(愛郷心)が、ここでもカギを握るとすれば、既にパトリを失った日本は、21世紀の人類の課題となりつつある地球温暖化問題でも、不利な立場に置かれることになるのだろうか。
『不都合な真実』の日本公開を迎え、温暖化懐疑論を排したIPCCの第四次報告が報じられる中、なぜ日本では環境政策が進まないのか、その結果国際社会における日本の立場はどう変わっていくのか、日本が環境対策でより戦略的に振る舞うために何が必要になるのかなどを、福山氏と考えた。