地球温暖化交渉と世界の潮流から取り残される日本
WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダー
1978年埼玉県生まれ。2001年立命館大学国際関係学部卒業。03年ボストン大学大学院国際関係論・環境政策修士課程修了。WWFジャパン気候変動担当オフィサー、同気候変動プログラムリーダーを経て11年より現職。共著に『脱炭素社会とポリシーミックス』、『平和学をはじめる』など。
1997年12月の京都で、人類史上初の地球温暖化を防ぐための新たな国際条約が締結され、21世紀の人類最大の課題とも言われる地球温暖化は解決の方向に向かい始めた。少なくともその時はそのように見えた。しかしその後京都議定書は思いのほか困難な道のりを歩むことになる。
2001年、アメリカでブッシュ政権が発足し、全世界の4分の1の温室効果ガスを排出するアメリカが、京都議定書から離脱してしまう。議定書が発展途上国に温室効果ガス削減を要求していないことと、議定書の内容がアメリカの国益に反しているというのがその主たる理由だった。
昨年2月、アメリカやオーストラリアが離脱したまま京都議定書が発効した。しかし、京都会議から9年たった今も、地球温暖化を防止するための国際的な努力は、その枠組みを作ることさえできていない。
先週ケニアのナイロビで、第二回京都議定書締約国会議(COP/MOP2)が開催された。議定書発効から2回目の会議となる。しかし、この会議でも今後の話し合いの日程を決めるのが精一杯という有様で、これといった成果のないままに終わってしまった。
しかし、その一方で、地球温暖化の影響が、より顕著に表れてきている。また、科学の進歩により、地球温暖化が人類にとっていかに深刻な脅威であることかが、日に日に明らかになっている。それがわかっていて、なぜ京都議定書は動かないのか。
環境NGOのWWF(世界自然保護基金)で地球温暖化問題を担当する山岸氏は、その理由として地球温暖化が地球規模の問題であるがゆえに、先進国と途上国の利害が衝突してしまっていることをあげる。1997年当時と比べて中国やインドなどの新興国はめざましい経済発展をとげ、今や先進国の経済的な脅威となりつある。しかし、そのインドも中国も、京都議定書では一切経済活動に制限を受けることはない。京都議定書があくまで先進国を対象とした条約となっているためだ。
しかし、そもそも京都議定書というものは、「共通だが差異ある責任」という言葉で、まずこれまで温室効果ガスの原因を作ってきた先進国が率先して対策を取り模範を示すことをうたっていたものだったはずだ。
人類は地球温暖化を解決する術を失ってしまったのか。民主的なプロセスでは100年先の地球を念頭に置いた施策をとることはできないのか。このまま進んだ場合のどのようなシナリオが人類を待ち受けているのか。ナイロビ会議から帰国したばかりの山岸氏とともに考えた。