人権問題としての象徴天皇制を考えるべき時にきている
青山学院大学国際政治経済学研究科特任教授
1951年東京生まれ。東京大学法学部卒。東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授などを経て2012年4月放送大学教養学部教授、16年4月より現職。東京大学名誉教授。専門は近現代日本政治史、オーラル・ヒストリー。博士(学術)。著書に『政治の眼力-永田町「快人・怪物」列伝』、『戦後をつくる―追憶から希望への透視図』、『政治家の見極め方』など。
小泉政治の意味を検証するシリーズ企画の第2弾は、東大の御厨貴教授を招いて「そもそも小泉政治とは何だったのか」を徹底的に議論した。
御厨氏によると小泉政治とは、「説得しない、調整しない、妥協しない」の「3つのない」から成り立っているという。派閥の領袖でないことに加えて、主要閣僚も党三役も経験していない小泉氏は、今までの基準から考えると、総理としての経験が不足している。そのため、もしその小泉氏が周囲の声に耳を傾けていれば、よってたかってもみくちゃにされ、ほとんど何の行動も起こすことができなかったにちがいないと御厨氏は言うのだ。
しかし小泉氏は、人の話を聞かずに独断専行路線を走った上に、これもまた従来の政権とは正反対に、最大派閥の田中派の意向を無視し、むしろそれと徹底的に対決することで、その推進力を得ることに成功した。御厨氏はこれを、場当たり的な行動を厭わない性格と、それがうまくいった時に即座にそれを取り入れる独特の嗅覚に起因するものと分析する。その結果、従来の自民党の政策決定過程を無視し、手続き面において透明性を確保したことが、世論の支持を集めた大きな要因のひとつとなった。
そして、何といっても小泉政治の最大の特徴は、「小泉劇場」と呼ばれる常に一般受けを意識しながら、世論の後ろ盾で物事を消化していく手法だった。御厨氏はこれを功罪相半ばすると見る。今まで政治に関心のなかった世代や層を政治に引き込んだことの意味は大きいが、あまりに政治が大衆迎合型になったことの弊害も無視できないからだ。
また、この手法に慣れてしまった国民は、仮に安倍政権ができた時に、その政治手法には飽き足らない思いを抱く可能性が高い。世論は、敵をみつけてそれと対決する小泉劇場を支持したが、安倍政権ではそもそもその敵がいなくなっていると、御厨氏は言うのだ。
小泉政権の前と後で何が変わったのか、自民党は本質的に変質したのか、劇場型政治の功罪とは何か。安倍政権で何がどう変わるのか。御厨氏とともに小泉政治の功罪を考えた。