鳩山政権は何に躓いたのか-新政権の課題
北海道大学教授
東京新聞・中日新聞論説委員
1958年岡山県生まれ。81年東京大学法学部卒業。同年同大学助手。北海道大学法学部助教 授を経て93年より現職。著書に『民主党政権は何をなすべきか』、『政権交代論』など。
かつて自民党の権力中枢にあった小沢一郎氏が、ついに野党民主党の代表となった。剛腕政治家の呼び名が高い小沢氏のリーダーシップに期待する声がある一方で、日本の政治から野党が消滅したかのような印象を受けている人も少なくないはずだ。なぜならば、小沢氏は自著『日本改造計画』の中で、現在の小泉構造改革路線に極めて近い新自由主義を明確に標榜してきた過去があるからだ。
しかし、かつて小沢氏の強権的な手法を厳しく批判してきた山口二郎氏は、小沢氏の民主党代表就任を諸手を挙げて歓迎する。小沢氏のマキャベリスティックとも言える政治哲学は、個々の政策に対するこだわりよりも、権力を得ることを何よりも最優先するはずだと山口氏は考える。そして、そのためには民主党の政策は小泉路線との差別化を図るためにも「イギリスブレア政権の第三の道に極めて近いものにならざるを得ない」と山口氏は見るからだ。
確かに、メディアインタビューなどを見る限り、小沢氏はここにきて過去の政策スタンスを微妙に修正しているかに見える。また、代表代行就任以来民主党の表の顔として露出機会が増えている菅直人氏も、小沢氏との政策的合意はできていると説明している。どうやら政策的には小沢氏は過去と決別したかのように見える。
山口氏は自民党が構造改革路線を踏襲する安部氏を小泉後継に据えれば、民主党との差別化が明確になり、有権者にとっては分かりやすい選択肢が提示されることになるだろうと、今後の展開に期待する。しかし、自民党もそうした状況を先回りして、あえて福田康夫氏や谷垣禎一財務相など小泉路線とは一線を画する候補者を立ててくる可能性も否定できないため、状況は予断を許さない。
山口氏とともに、小沢民主党誕生の意味を考えてみた。