「年収の壁」と「働き控え」を克服するためのベストな方法とは
大和総研主任研究員
建築基準法、独占禁止法、会社法に商法に証券取引法、そして国際会計基準の導入と郵政民営化。いずれも過去10年の間に日本が行ってきた大改革だ。こうした一連の制度改革によって、日本は国の形が大きく変質したと言っていいだろう。しかし、これらの改革のほとんど全てが、実はアメリカ政府が毎年日本に提出している構造改革要望書に記されているものばかりであるという事実を、我々はどう受け止めるべきなのだろうか。
『拒否できない日本』の著者関岡英之氏は、日本の主要な改革の背後にはことごとくアメリカの意向が働いていると指摘する。そして、アメリカ政府や政府に圧力をかける業界団体は、その事実を公文書やウェッブサイトなどで堂々と公表しているという。
しかし、アメリカ政府が自分たちにとって都合のいい制度変更を求めること自体は、本来それほど不思議なことではない。問題はなぜ日本がアメリカの要求をことごとく受け入れてしまっているのかだ。
確かにアメリカの求める改革の中には、より大きな自由や透明度を求めるものも多く、一定の普遍性を持つため、反論しにくい面はある。しかし、その背後にある「小さな政府」や「自由競争至上主義」などの思想は、アングロサクソン固有の特殊な価値に他ならない。それが日本人を幸せにできると考える根拠はどこにも無いと関岡氏は指摘する。
外圧を利用して国内で優位な立場に立とうとする役人や経済人、学者などはこれまでも時代の節目節目に登場してきた。しかし、現在日本が進めている改革は価値観やライフスタイルの本質的な変質を日本人に迫るものになりつつあるため、その影響は計り知れない。
日本はこのままアメリカの意に沿う形で国のあり方を変えていって本当にいいのか。一体誰がその手先となっているのか。なぜわれわれはそれを拒絶できないのか。そして、それを受け入れ続けた時、その影響はわれわれにどのような形ではね返ってくるのか。関岡氏とともに、一連の「改革」の本質とその問題点を考えた。