天皇・皇族の人権のあり方を問いつつ最高裁判決を検証してみた
東京都立大学法学部教授
政府の有識者会議が、僅か半年の審議を経て、女性・女系天皇を容認する最終報告書を提出した。これを受けて政府は来年3月にも、天皇を男子に限るとした現在の皇室典範の改正案を国会に提出する方向だという。
しかし、女性・女系天皇の容認には、専門家の間でも異論が根強い。日本大学の百地教授も、この問題は天皇制の根幹に関わる問題であるがゆえに、拙速な結論は避けるべきだとの慎重論を取る。また、専門家も入れず、皇室の意見も聞かずに出した結論の正当性にも疑問を呈する。
確かに125代男系で続いてきた天皇家の伝統を、有識者会議の短時間の議論で変えることに対しては、「はじめから容認ありき」「場当たり的」との批判も根強い。
また、女性天皇は過去に10代8人存在したが、母方だけに天皇の血筋を引く女系天皇は有史以来一人もいないことも事実。百地氏は、もし今後女系天皇が誕生すれば、事実上天皇家の万世一系は断絶することになるとも説き、そのことが天皇の権威の低下や天皇制廃止の動きにつながる可能性を懸念する。
百地氏はさらに、お世継ぎを男性に限ることが法の前の平等を定めた憲法に違反するのではとの指摘に対しても、天皇及びその伝統は憲法より上位に位置すると反論する。憲法で天皇の世襲を謳っていること自体が、天皇は一般国民とは異なる存在であることを憲法が認めていることの証だと言うのだ。
とはいえ、現に男子の後継者が生まれず、皇室の存続そのものが危くなりつつある現実に直面している上、各世論調査でも7割以上が女帝を支持する結果が出ているなかで、現行の男系・男子にこだわることが、国民の支持を得られない可能性もある。
いずれにしても、今回のお世継ぎ問題が、本来であれば天皇制の本質に触れる問題であるにもかかわらず、メディア上ではどこか矮小化されたワイドショー的扱いに終始している感は否めない。そこで今週の丸激では、女性・女系天皇がなぜそれほど大きな問題なのか、女系天皇が生まれると日本の何が変わるのか、皇室は日本が日本であるためには不可欠なものなのか、今日の日本の国体とな何なのかなど、天皇性そして日本のアイデンティティに関わる基本的な問いを、百地氏とともにじっくりと考えてみた。