なぜ防衛調達は腐敗を繰り返すのか
ジャーナリスト
1961年東京都生まれ。84年日本大学経済学部卒業。金融専門誌や経済誌を経て、89年「経済界」に入社。90年よりフリーに。著書は『投信バブルは崩壊する!』、『下流喰い』など。
波乱の郵政国会の裏で、橋梁工事をめぐる談合事件の追求が粛々と進んでいる。一般市民の多くは「また談合か」と冷ややかな目で見ているかもしれない。それほど日本における談合は根が深いと見ることもできるが、経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は、今回の橋梁談合の告発と郵政民営化は密な関係があると指摘する。
まず、郵政民営化法案の成立を最大の優先課題に掲げる小泉政権が、法案への反対派を牽制する意味合いが込められていた。郵政族と橋梁談合に関係する議員は「かなりの確率で重なっている」(須田氏)からだ。「法案に反対すると談合で摘発するぞ」との暗黙の脅しが効いている可能性は否定できない。「政権が命じたわけではないだろうが、公取は政権の意向を汲んで捜査に乗り出したのではないか」と須田氏は指摘する。
しかし、より重要な点は、郵政民営化も談合の摘発も、いずれも日本的再配分システムを根底から変えようとの意図が含まれている。それはまた、経世会的再配分政策の否定と換言することもできる。
公共事業費が削られる中、談合によって事業の配分が行われなければ、中小の建設会社の多くは生き残ることができない。そのために談合によって、事業費をできるだけ引き上げる一方で、経営基盤が弱い中小企業にも売り上げを配分するという側面を持っている。
また、郵政民営化もその本質において、郵貯簡保の350兆円を特殊法人を通じてばらまく再配分体制への挑戦に他ならない。その意味で、郵政民営化と談合の摘発が同時進行していることは決して偶然ではないというわけだ。br
政界にも波及する様相を呈し始めている橋梁談合と、政界大混乱の元となった郵政民営化から見えてくる「日本的再配分のあり方」を議論した。