北朝鮮問題に落としどころはあるのか
拓殖大学海外事情研究所国際協力学研究科特任教授
1949年兵庫県生まれ。77年慶應義塾大学大学院博士課程修了。同年、防衛研修所(現・防衛研究所)入所。2011年退官。韓国・延世大学校国際学部専任教授、東北アジア国際戦略研究所客員研究員などを経て、15年より現職。専門は朝鮮半島情勢、国際関係論。著書に『東アジア動乱 地政学が明かす日本の役割』、共著に『金正恩の北朝鮮 独裁の深層』など。
日朝間には拉致問題と並び、核・ミサイル問題という重大な懸案がある。特に後者は他国への拡散リスクもあるため、日本のみならず国際社会共通の関心事となっている。しかし、2002年9月の日朝交渉で北朝鮮が拉致の事実を認めたことで、日本国内の世論は硬化し、以来核・ミサイル問題も悪化の一途をたどってきた。防衛研究所の武貞秀士氏は、今回の訪朝で小泉首相が拉致問題で世論の納得を得られるだけの一定の成果をあげることができれば、核・ミサイル問題の解決を緒につけることが可能になるかもしれないという意味で、今回の日朝会談は重要な機会だったと指摘する。しかし、拉致問題での中途半端な進展によって、かえって対北朝鮮世論の悪化を招き、事態進展の機会を逸してしまった可能性が否めない。屈指の北朝鮮ウオッチャー武貞氏とともに、拉致問題と核・ミサイル問題のバランスのあり方をあらためて考えた。