1968年東京都生まれ。91年早稲田大学政治経済学部卒業。博士(政治学)。静岡大学人文学部助教授、英オックスフォード大学客員フェローなどを経て2007年より現職。21年よりYahoo!ニュース公式コメンテーター。日本政治法律学会理事長。著書に『都市対地方の日本政治』、『現代欧州統合の構造』など。
通常国会が6月23日に閉会する。
この国会は自民党の裏金スキャンダルに端を発する政治改革、とりわけ政治資金を巡る論議に多大な時間とエネルギーが費やされ、メディア報道も自ずと政治とカネ問題に集中した。しかし、その裏では国家100年の計に関わると言っても過言ではない重要な法律が、さしたる審議も経ずに次々と成立していた。
国民の生殺与奪に関わる意思決定を行う政治が国民の信頼を得ているかどうかは、民主主義の国にとっては死活問題ではある。しかし、その論議に目を奪われて、その間に国民の生殺与奪に関わる重大な意思決定がさしたる審議も経ずに次々と下されてしまうのは、まったくもって本末転倒だ。ましてや史上最低水準の支持しか得ていない政権に、そのような重大な決定を委ねて本当にいいのだろうか。
悪法も法なり。法律ができてしまえば、それは善し悪しにかかわらず執行される。また、一旦作られてしまった法律や制度は一度走り出してしまえばそう簡単には変えられないものも多い。その意味で、今国会で可決したいくつかの重要法案は、できるだけ早くその危険性や問題点を十分に周知させ、修正が必要なものは速やかに修正する必要がある。
今回のマル激では改正された政治資金規正法、経済安保情報保護法(セキュリティクリアランス法)、次期戦闘機条約、自衛隊統合作戦司令部設置法、農業基本法の改正と食料困難対策法、地方自治法と入管法の改正、共同親権を導入した民法の改正、日本版DBS法、NHKのネット業務を必須事業に引き上げる放送法の改正などを取り上げ、それぞれの法律の内容とその問題点、それがなぜ国民生活に大きな影響を及ぼし、日本という国の形を変えかねない重大な法律なのかなどについて白鳥浩・法政大学大学院公共政策研究科教授とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
また、裏金問題で複数の逮捕者まで出す一大政治スキャンダルに塗れながら、事実上ゼロ回答となる政治資金規正法の改正案しか通せない岸田政権と自民党の限界や政治資金以外の重大法案を争点化できない野党の問題意識の低さ、国の形が変わろうとしているにもかかわらず旧態依然たる政治報道を続けているメディアの体たらくについても、厳しく検証した。
更に、6月20日に告示された東京都知事選について、明らかな売名を目的とした候補者が乱立している問題や、1期目と2期目の間の小池知事の180度の変節と経歴詐称問題との関係などについても議論した。