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その月の5回目の金曜日に特別企画をお送りする5金スペシャル。今回は12月17日に東京・大井町「きゅりあん」で行われた「年末恒例マル激ライブ」の模様を無料放送する。
今回のマル激ライブでは、パーティ券裏金問題を入口に、もはや日本の政治や経済、社会の底が抜けているのは明らかなのだから、日本という沈みゆく船の中で他の人たちを踏み台にしながら少しでも上に行こうとするのではなく、この船がこれ以上沈まないように何をすればいいか、そして日本を再浮上させるために自分たちに何ができるかを一緒に考えていこうではないかという議論をした。
目下、永田町を揺るがしているパーティ券裏金問題では、メディアは相変わらず検察のリーク情報を垂れ流すことで、裏金をもらっていた政治家の名前や大物政治家の逮捕はあるのかといったワイドショー仕立ての人間ドラマに世間の耳目を集めようとしている。しかし、そもそもこの問題は、パーティ券の購入を通じた派閥や政治家への寄付が、本来は20年以上も前に禁止されていたはずの企業・団体献金の抜け穴になっている点、つまり裏金ではなく表金の方により重大な問題がある。
パーティ券の購入を通じて今も事実上、億単位の企業献金が可能となっており、それが日本が過去30年にわたり有効な経済政策や産業構造や社会構造の改革を実行することができなかったことと決して無関係ではないことを、われわれは今あたらめて再確認する必要があるだろう。日本では多額のパーティ券購入という寄付によって、ビジネスモデルが陳腐化し本来であれば退場すべき生産性の低い企業や業界の利益が手厚く保護され続けてきた。逆に言えば、それがなければ本来は営利団体である企業や業界の利益を代表する業界団体が、自民党やその派閥や有力政治家に億単位の寄付を行う理由などないのだ。
結果的に1995年に1人当たりGDPで主要先進国で1位まで登りつめ、文字通り経済大国となった日本は、その後30年間、停滞に次ぐ停滞を続け、遂にはG7の最下位はおろか、今や先進国の地位からも転げ落ちようかというところまで堕ちている。本来であれば人口減少を相殺するペースで生産性を上げていかなければ経済が縮小してしまうことが自明であったにもかかわらず、先進国では日本だけが陳腐化した非効率な産業構造や人口ボーナスがあった頃の高度経済成長時代の社会構造を引きずりつづけ、30年もの長きにわたり経済成長も賃金の上昇も実現できなかった。その一方で、人口減少の原因である少子化対策も、何ら有効な手を打てていない。
ここまで沈みかけた日本という大きな船を修理し、それを再浮上させるのは容易なことではない。しかし、幸か不幸か、たまたまこのような局面で生きる希有な運命を背負った今を生きる日本人にとって、船の中で少しでもいい座席を取ろうと奮闘することが、本当に有意義な生き方と言えるだろうか。日本という国を、せめてもう少し展望を持てる国にした上で、次の世代にバトンタッチする方がよくないだろうか。
しかし、1人では長くは戦えない。戦うためには仲間が必要だ。また、発進基地であり、帰還基地となるホームベースも必要だ。いつでも帰れると思える信頼できる仲間がいてホームベースがあればこそ、ホームベースの外で存分に闘うことができる。高度経済成長期に農村共同体に取って代わる形で登場した企業共同体は、小泉改革以降の数々の新自由主義的政策によって正規と非正規労働者に分断され、もはや崩壊状態にある。結果的に大半の日本人が何の共同体にも属さない、つまりホームベースを持たない中で日々暮らしている。教会やチャリティなどの地域の共同体が伝統的に存在しない日本では、個々人が能動的に共同体を作り、自らそこに参加しようとしなければ、ホームベースを持つことはできない。しかし、自分さえその気になれば、それは十分に可能だ。
2023年最後となるマル激では、なぜ日本が壊れ続けているのか、どうすればこの沈没を反転できるか、壊れゆく社会をいかに生き抜くかなどについて、ジャーナリストの神保哲生と宮台真司が議論した。