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2023年05月27日公開

ChatGPTが投げかけるAI新時代の諸課題とその先に見えるもの

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1155回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年08月27日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1976年大阪府生まれ。99年慶應義塾大学環境情報学部卒業。2008年同大学大学院政策・メディア研究科博士課程修了。博士(学術)。01年日本電信電話株式会社(NTT)入社。20年より現職。NTT人間情報研究所客員上席特別研究員、慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授を兼務。人工知能学会理事。著書に『AIの雑談力』、『おうちで学べる人工知能のきほん』など。

著書

概要

 誰でも使えるAIが登場した。ChatGPTというAIだ。これを2022年11月にアメリカオープンAI社がネット上に無料で公開したことで、一般の市民がAIの急速な発達を身をもって実感することになった。

 しかし、ChatGPTはAIの「すごさ」と「やばさ」の両方をわれわれに体感させてくれる。

 マル激では2014年から3度、AIを様々な角度から取り上げてきたが、当時から、AIが特定の職業を奪うのではないかとか、教育の妨げになるのではないかといった懸念が指摘されてきた。しかし、その段階ではいずれもどこか遠い未来の話のような感覚があったことは否めなかった。しかし、ChatGPTが吐き出してくる、ごく自然でしっかり論理立てされている文章を見れば、その懸念がいよいよ現実のものになってきたと感じる人は多いだろう。

 しかし、何はともあれ、まずはChatGPTを正当に評価する必要がある。これが生成する文章だけを見て、AI技術が突如として大幅に進歩したと考えるのはちょっと早計かもしれない。

 ChatGPTというのは、オープンAI社が開発した「大規模言語モデル(LLM)」だ。インターネット上の文章を学習し、間違った出力をする場合は正しい回答を再び学習させることによって精度を上げている。このようなきれいな文章を生成するためには、単にネット上の文章を学習させるだけではだめで、入力文と応答文の実例を覚えさせる「ファインチューニング」や、人間の望むような回答を出力させる「アラインメント」といった作業が必要になる。そしてそのかなりの部分は人間の手で行われていると、名古屋大学大学院情報学研究科教授で対話型AIが専門の東中竜一郎氏は説明する。

 専門家にとっては大規模言語モデル自体は数年前から登場しており、ChatGPTの技術は必ずしも真新しいものには見えないそうだ。強いて言うならば、何年もかけて大規模な学習データを蓄積させた点は目を見張るものがあるといったところか。しかし、ChatGPTが世界的に広く、しかも無料で公開されたことで、世界中で多くの人がAIが便利なツールになり得ることを実感してしまった。と同時に、AIの脅威や問題点も指摘されるようになり、AIは政治的なアジェンダとして広島サミットのデジタル大臣会合や教育大臣会合でも議題に上っている。

 一方、世界では各地でChatGPTの使用を制限する動きがみられる。イタリアでは個人情報漏洩の恐れがあるとして、2023年3月末に先進国で始めて国内でのChatGPT一時使用禁止に踏み切った。現在は使用禁止が解除されているが、アメリカやオーストラリアでも一部の州の公立学校で、ChatGPTの使用が禁止されている。ただし、学校で使用を禁止する動きの背景には、授業の課題をChatGPTに書かせる生徒が続出することを懸念したものが大半のようだ。

 また、生成AIと従来の著作権の概念をどう整合させるかという問題も深刻だ。アメリカでは5月2日から、ハリウッドの脚本家約1万1,500人が所属する団体WGA(Writers Guild of America=全米脚本家組合)がストライキを続けているが、組合側の要求の中には、AIで脚本を書くことやAIに自分たちの作品を学習させることを禁止せよというものが含まれている。

 われわれ人間も日々たくさんの話を聞いたり本を読んだりして学習して文章力や表現力を付けていくが、人間が学習することとAIに学習させることの何が違うのかはAI論争の中でも中心的な議題になる。東中教授は現段階ではAIには創作意図があるとはいえない点が人間とは異なると指摘する。AIが吐き出す文章は、外部から与えられた「こういうものが好まれているらしい」という統計情報に基づいたものなので、創作意図は人間側が与えたプロンプトに依存しているという。しかし、われわれ人間が文章を書くときも、「こういうものが好まれているらしい」という判断基準を少なからず考慮に入れているのも事実だろう。

 ChatGPTは何が画期的なのか、生成AIの技術はどこまで来ているのか、その技術が一般市民の手の届くところまで降りてきた今、あらたにどんな懸念が出てきているのか、その懸念は妥当なのかなどについて、名古屋大学大学院情報学研究科教授の東中竜一郎氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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