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2023年04月29日公開

共産党が変われば日本の政治は変わる

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1151回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年07月29日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1968年三重県生まれ。91年東京大学法学部卒業。95年同大大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。博士(法学)。大阪市立大学助教授、立教大学教授、一橋大学大学院社会学研究科教授などを経て2023年より現職。著書に『日本共産党-「革命」を夢見た100年-』、『自公政権とは何か』など。

著書

概要

 日本共産党が大きな岐路に差し掛かっている。

 今回の統一地方選で共産党は大きく議席を減らした。それほど大きなニュースにはなっていないが、共産党は昨年末から今年にかけて、小池晃書記局長によるパワハラ問題や、著書の中で党首公選を訴えたベテラン党員の松竹伸幸氏を除名処分にするなど、共産党という組織の体質が根底から問われるような出来事が続いていた。選挙結果との因果関係が確認できるわけではないが、一連の出来事は有権者にとって党の体質に不安を抱かせるには十分なものだったと言えるだろう。

 一橋大学在学中に共産党に入党し、代々木の党本部で党政策委員会の安保外交部長まで務めた経歴を持つベテラン共産党員だった松竹伸幸氏は、今年1月に出した著書『シン・日本共産党宣言』の中で、すべての党員が投票権を持つ党首公選の導入を主張した。それに対して共産党は、松竹氏が党規約の「党内に派閥・分派はつくらない」(第3条4項)、「党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない」(第5条2項)、「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」(第5条5項)などの条文に反したとして、松竹氏を除名処分にした。

 松竹氏の除名問題は、民主集中制を組織原則とする共産党の特殊な体質を強く印象付けると同時に、共産党が長年内包してきた政策面での矛盾を露呈した。なぜならば、松竹氏は元々、日米安保自衛隊問題で党の公式な立場に異論を唱え、これまでも党中央と衝突してきたからだ。松竹氏自身、党首公選制を主張する理由として、こうしたデリケートな問題をオープンな場で議論しない限り共産党は変われないし、それなくして有権者の理解を得られないだろうと考えたからだと、ビデオニュース・ドットコムのインタビューの中で述べている。

 現行の小選挙区制を柱とする衆院の選挙制度の下では、一つの選挙区に複数の野党候補が乱立している限り、候補者を一本化している自民・公明の連立政権に勝つことは到底できない。実際に2012年の総選挙で自民党民主党から政権を奪還して以降の選挙でも、総得票数では野党が自民党を上回っていても、獲得議席数では自民党が過半数を大きく超える選挙が続いている。

 野党が一枚岩になれない限り政権交代は難しいことは誰の目にも明らかだが、その際に共産党の存在が大きな障害となる。これまでも民主党はそんな共産党との距離の取り方に苦労してきた。共産党と選挙区調整を行い候補者を一本化すれば当選の確率が格段にあがる候補が多くいることはわかっているが、そうなると今度は民主党内のとりわけ保守派右派と呼ばれる人々が、共産党との共闘を嫌い、分党行動に出始める。結局民主党は立憲と国民に分裂してしまったが、その一因に共産党との共闘のあり方をめぐる意見の相違があった。結局、共産党が今のままでは本当の意味での野党共闘は実現が難しいのだ。

 近年、共産党は野党共闘を実現するために自衛隊や日米安保を当面は認めるなど、自らの主張を封印しているが、とはいえその政策スタンスを根本から変えたわけではない。まだまだ元来の共産党のアイデンティティと言っても過言ではない反米反安保自衛隊違憲論などの理念を腹の中に抱えつつ、便宜的に他の野党と歩調を合わせている感が否めない。実際に多くの有権者もそう感じている。そのため、民主党や立憲民主党が共産党と野党共闘を組み、選挙協力や候補者調整などを行うと、決まって自民党からは「基本政策が異なる政党の共闘は野合だ」などと批判をされて揺さぶられる。実際、その批判には一定の説得力があったのも事実だろう。

 有権者から「共産党は本当に変わった」と受け止められるためには、自衛隊や日米安保など党の基本政策に関わる問題について、現在のような本音をオブラートに包んだまま「当面は認めることとする」というような表層的な変更ではなく、綱領などでその立場をはっきりと打ち出すことが必要ではないか。そして、そのためにはこれまでの民主集中制の名の下での密室内での決定ではなく、松竹氏が主張するようなオープンな場での議論が不可欠ではないだろうか。

 しかし、共産党は変われるはずだと、中央大学法学部教授で昨年5月に出版された『日本共産党』の著者の中北浩爾氏は言う。なぜならば、実は共産党の歴史は基本政策を転換し続けてきた歴史だったからだ。

 例えば共産党は戦後の憲法制定時に「中立自衛」の立場を取り、自衛のための戦争は肯定されるとの理由から、の保有や交戦権を放棄している憲法9条に反対しているし、天皇制にも反対だった。しかし、今や共産党は護憲、とりわけ憲法9条の堅持を強く主張し、天皇制も受け入れている。このように共産党はその時代状況に合わせて、自らの基本政策を大きく転換させてきた歴史がある。

 中北氏は、欧州ではコテコテの共産主義からより民主的社会主義政党へと脱皮できた共産党は、今も一定の勢力を保っているが、イデオロギーにこだわり保守的共産主義を標榜し続ける共産党はどこの国でも力を失っていると指摘する。

 日本の政治が政権交代のない自民・公明による永続的な支配構造から抜け出せるかどうかは、共産党の去就にかかっていると言っても過言ではない。共産党自体は国会内ではそれほど大きな勢力ではないが、共産党が変わらなければ真の意味での野党共闘が実現せず、現行の選挙制度の下ではほとんど勝負にならないからだ。

 共産党は変われるのか。変われるとしたら、どのような政党になっていくべきなのか。変わらなければならないことは松竹氏に限らず多くの党員が理解しているはずだが、何が変わることを妨げているのか。日本の政治を救うために共産党に何ができるかについて、中央大学法学部教授の中北浩爾氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者が議論した。

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