日本は次の感染症への備えはできているか
弁護士
1970年福岡県生まれ。95年東京大学医学部保健学科卒業。2002年山口大学医学部医学科卒業。佐久総合病院総合診療科などを経て10年より現職。沖縄県地域医療構想検討会議委員、沖縄県在宅医療・介護連携推進事業統括アドバイザーなどを兼務。著書に『ホワイトボックス 病院医療の現場から』、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』など。
新型コロナウイルスの感染が再び拡大し医療現場のひっ迫が伝えられている。
政府は先月26日、これからの3週間が正念場だとして、感染拡大を抑制するための対策を強化する方針を打ち出している。ただ、GOTOの扱いや、東京都の高齢者などへの移動自粛要請など、日々変わる呼びかけに、戸惑いもひろがる。
沖縄県の公立病院の感染症内科医であり、厚生労働省新型コロナ対策推進本部の参与も務める高山義浩氏は、このままでは年末年始の医療は持たないと危機感を募らせる。
新型コロナの高齢者の致死率はインフルエンザの比ではなく、80歳代では20%近い。60代、70代でも新型コロナに感染すると、あっという間に人工呼吸器が必要になる人たちがいるという。報道される重症者の数字ではなく、その前の段階の中等症の患者をどう診るかが重要だと高山氏は指摘する。
ただし、冬場に医療がひっ迫することはこれまでもあった。そこに新型コロナという新たな負荷がかかり、地域医療の課題があらわになっていると高山氏は語る。
沖縄での経験から、高齢者施設などで利用者の感染が疑われた場合、とにかく素早く対応しクラスターにさせないことが重要だと高山氏は言う。沖縄では医師は24時間以内に現場に行き、感染防御の態勢が整備できているかをチェックし、感染リスクの高い人たちをなるべく広範囲に捉えて検査を繰り返すことで、これまでなんとか感染拡大を抑えてきた。
沖縄県はGOTOキャンペーンが始まって10日ほどした7月末に、県独自の緊急事態宣言を発令している。高山氏は、旅行そのものよりも、旅行先でマスクを外して飲食をすることなどが感染拡大につながっていることを指摘した上で、どこに行くかではなく、行き先で何をするかが問題であることを強調する。自治体によって状況は異なるが、自治体ごとの施策には予算にも制限があり、限界がある。今こそ国としての判断が必要なときではないかと高山氏は語る。
高山氏はまた、社会的な支援が必要な弱い立場にある人たちの感染状況を危惧する。感染症に強い社会はどうあるべきか、新型コロナ以後を見据えた議論が求められる。
GOTOに対する評価やワクチンへの期待と課題なども含め、医療現場と行政の間で日々、新型コロナ対策に取り組んでいる高山氏と、社会学者の宮台真司氏、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。