新しい「育成就労」制度の下で日本は外国人労働者に定着してもらえる国になれるのか
京都大学大学院文学研究科准教授(国際連携文化越境専攻)
1971年沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業。2006年龍谷大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。学術振興会特別研究員を経て08年より現職。
改正出入国管理法が成立したことで、日本は来年4月から今後5年間で、34万人余りの外国人労働者を受け入れることになる。
政府は深刻な人手不足を理由にあげているが、果たしてこの法改正で本当に人手不足は解消されるのか。
アジア諸国の現状を調査・研究している京都大学の安里和晃准教授は、この法律は20年前に作っておくべきだったと指摘した上で、これから日本で働こうというアジア諸国の若者たちには法律の中身が理解できないだろうと語る。制度的には「中間技能人材」となるべき人が単純労働者とみなされるなど、定義から混乱しているからだ。
外国人労働者の受け入れについては、送り出し国の仲介業者(ブローカー)への高額な斡旋料が問題になることが多い。しかし、その事情は複雑で、国によって規制にもバラツキがある。
人手不足が深刻な介護業界では、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマーといった国々からの人材を期待しているが、調査を続けてきた安里氏によれば、これまでも海外に人材を送り出し外貨を稼いできたフィリンピンは自国の労働者を護るためにかなり厳しい規定があるが、新たに参入してきたベトナムなどでは、政府と一体化したブローカーが高い斡旋料を要求する場合があり、かなりの借金を背負って働きにくる若者たちが数多くいるという。
介護職についていえば、2008年に始まった経済連携協定(EPA)に基づく公的な仕組みと、技能実習、介護留学、そして新たにできる特定技能と、いくつもの制度が混在する。わかりにくい制度は、そのまま誤解や騙し、搾取の原因となると、安里氏は危惧する。ことに、EPA以外は、市場原理に基づき斡旋料や日本語教育費用等が決まるおそれがあり、それを各国の若い人たちが自ら負担して日本に働きに来ることになるのだ。
日本は、外国人労働者にとって働きやすい場であるかどうかも、考えなくてはならないだろう。成長するアジアには、多くの労働需要が誕生している。本当によい人材を雇用したいなら、外国人材は高いという認識も必要だと、安里氏は主張する。生産人口年齢になるまでの教育や医療等の負担はせずに労働力だけいただく、という発想は、国際社会では通用しないというのだ。
送り出し国の事情に詳しい安里和晃氏に、ジャーナリストの迫田朋子が聞いた。