裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
神戸学院大学法学部教授
弁護士、元検事
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1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。民間企業勤務を経て80年司法試験合格。83年検事任官。東京地検、広島地検、長崎地検、東京高検などを経て2006年退官。08年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)を設立。10年法務省「検察の在り方検討会議」委員。11年九州電力やらせメール事件第三者委員会委員長などを務める。著書に『“歪んだ法”に壊される日本』、『「単純化」という病』など。
自民党が各派閥によるパーティ券収入の申告漏れと、政治家への多額のキックバック疑惑で大揺れに揺れている。
自民党では政治資金を集めるためにパーティが広く実施されているが、政治資金規正法には自民党の派閥を含む政治団体に対し、20万円を超えるパーティ券を購入した個人や団体については、これを政治資金収支報告書に記載しなければならないことが定められている。
今回問題となっているのは第一義的には20万円を超えるパーティ券の購入者の名前が申告されていない事例が多く見つかったというものだが、更に大きな問題となっているのは、巨額のパーティ券収入が裏金として政治家にキックバックされていたことが明らかになり、大きな疑獄事件の様相を呈し始めていることだ。自民党の各派閥では所属する議員に一定額のパーティ券販売のノルマを課す慣習が一般化しているが、ノルマを超えたパーティ券を売り捌いた政治家には派閥からキックバックが行われ、これが政治の世界の裏金として使われていた疑惑が取り沙汰されているのだ。
政治資金規正法に精通し、検事として政治資金規正法違反事件を捜査した経験も持つ弁護士の郷原信郎氏は、今回の裏金疑惑について、「以前から指摘してきた問題がまた表面化した」と半ばあきれ顔で語る。
郷原氏によると、現行の政治資金規正法はザル法ならぬ、「ザルの真ん中に大きな穴が空いている」状態が放置されており、現行法では裏金の報告義務がどの政治団体に課されているかが明確でない場合は、仮に裏金を受け取っていたことが明らかになったとしても、それだけでは法律違反で立件することが難しくなっていると指摘する。
郷原氏はまた、現行制度の下では政治資金規正法は規制を受ける当事者である政治家自身に委ねられているために、政治家自身が自分たちの集金力を制限するような法改正が期待できなくなっていることも問題視する。カネによって政治が歪められることを防ぐためには、利益相反を抱える政治自身ではなく、選挙制度審議会などの場で有識者らや経済人なども含めた外部委員会で政治資金規正法の改正が議論される必要があると郷原氏は語る。
現在進行形で広がるパーティ券問題と裏金問題の本質と、政治資金規正法というザル法の真ん中に空いた大穴とは何か、政治とカネの問題を正すために何をしなければならないかなどを郷原氏にジャーナリストの神保哲生が聞いた。