共産党が変われば日本の政治は変わる
中央大学法学部教授
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1955年長崎県生まれ。79年一橋大学社会学部卒業。74年共産党入党。全日本学生自治会総連合(全学連)委員長、日本共産党国会議員秘書、共産党安保外交部長などを経て2006年、自衛隊の評価を巡る意見の相違から共産党を退職。同年かもがわ出版入社。14年、伊勢崎賢治氏、柳澤協二氏、加藤朗氏らと「自衛隊を活かす会」を立ち上げ事務局長に就任。23年、党首公選制を主張したことなどが規約に反するとされ、共産党から除名処分を受ける。著書に『シン・日本共産党宣言』、『日米地位協定の真実』など。
今年1月、ベテラン共産党員の松竹伸幸氏は『シン・日本共産党宣言』を出版し、党首公選を主張するなどして今の共産党のあり方に一石を投じた。これに対し共産党は松竹氏を除名するという対応に出た。党側は、松竹氏が党規約の「党内に派閥、分派はつくらない」、「党の統一と団結に努力し、党に敵対する行為はおこなわない」、「党の決定に反する意見を、勝手に発表することはしない」などの条項に反したからだと主張している。
共産党のこの反応が、物議を醸している。
現在、共産党では党大会で全国から選出された約1,000人の代議員が、選挙で約200人の中央委員を選び、中央委員会が党首である幹部会委員長やナンバー2の書記局長などの役員を選んでいる。しかし、その過程は非公開であり、政策を巡る討論なども、少なくともオープンな場では行われていない。これに対して松竹氏は、全党員による投票で党首を決める党首公選を提唱し、ヒラの党員でも立候補できるようにすべきと主張している。松竹氏は、党内には本当は多様な意見があるのに、現在の「民主集中制」ではオープンな場で議論を戦わせることが難しいため、外から見ても共産党が議論のできない政党のように見えてしまっていると語る。
しかし、松竹氏の本音は単に党首公選制の導入にとどまらない。松竹氏は以前から日米安保や自衛隊について、志位委員長をはじめとする党執行部とは異なる意見を表明してきた。実際、党の政策委員会で安保外交部長まで務めた松竹氏が党を退職することになったのも、志位委員長と自衛隊を巡る意見の対立だった。共産党は日米安保は廃棄、自衛隊は違憲というスタンスを基本的には変えていないが、松竹氏は自衛隊は合憲で活用すべきだし、政権入りするのなら日米安保は堅持すべきだと主張し、2014年からは元内閣官房副長官の柳澤協二氏らと「自衛隊を活かす会」を起ち上げ、その事務局長も務めている。共産党が自衛隊解消にこだわらず、それを活かす方向に転換できれば、政権を目指すための野党共闘への道筋も見えてくるはずだと松竹氏は言う。公選になればこうした基本政策をめぐる議論がオープンな場で行われることになり、それが共産党が本当に変わったかどうかを見極める上での試金石になる。
今回の統一地方選の前半戦では、共産党は各地で議席を減らしている。共産党の牙城と言われ、松竹氏が所属していた京都でさえ、共産党は京都市議選で18議席から14議席に、府議選では12議席から9議席へと、議席を大きく減らしている。松竹氏は、除名処分が統一地方選の結果に影響していることは否定できないとし、特に無党派層にとっては党首の選出方法や自衛隊問題について執行部と異なる主張をしただけでいとも簡単に除名されるということへの衝撃は大きく、票が集まらなかった原因になっていると指摘する。
来年の党大会で除名処分の撤回を求める動議を提出すると語る松竹氏に、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。