どのような政治活動を誰が負担すべきか
日本大学法学部教授
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1950年東京都生まれ。76年日本大学法学部卒業。81年慶應義塾大学大学院法学研究博士課程単位取得退学。慶應義塾大学新聞研究所講師、常磐大学人間科学部教授などを経て00年より日本大学法学部教授。21年退官。同年より現職。著書に『「政治資金」の研究』、共著に『日本政治とカウンター・デモクラシー』など。
「またか」と思われる向きもあろうが、またまた政治とカネの問題があらためてクローズアップされている。
広島で河井克行元法相とその妻案里氏が公職選挙法の買収で有罪判決を受けたのに続き、新潟では自民党の泉田裕彦衆院議員が後援者の県会議員から裏金を要求されたとして刑事告発する一方で、京都では自民党の現職の衆参両院議員が、選挙で動いてもらうために50人からの府議や市議にカネを渡していたことが明らかになっている。
今回の問題は「政治とカネ」の中でも最も悪質とも言っていい、選挙における「買収」だ。どうやら自民党の国会議員、いやこれは自民党に限ったことではない可能性も大きいとされるが、いずれにしても国会議員の多くが、選挙区のある自治体の首長や県会議員、市議会議員らにカネを払って選挙での票の取りまとめを依頼する慣習が常態化しているようなのだ。しかもそれが現行法の下では合法だと強弁できるようになっているというのだから、問題は根深い。誰がどう見ても単なる買収に見える行為が、現行の公職選挙法や政治資金規正法の下では、政治家個人に対してではなく「政党支部」を経由することで、どういうわけか違法にはならないという解釈が成り立つのだという。これでは「政党支部」がまるで打ち出の小槌のようだ。
政治とカネの問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は、そもそもリクルート事件や佐川急便事件で政治家個人への政治献金が政治を歪めていることが明らかになったことを受けて1994年に大改正が行われた現在の政治資金規正法が、30年近い歳月の流れとともに多くの抜け穴が作られるなどして形骸化している問題を指摘する。
特に政党支部が事実上、政治家個人のお財布になっているにもかかわらず、法律上は企業団体献金を始め個人レベルでは禁止されている様々な政治献金が認められている「政治資金団体」として認定されている点に問題があるようだ。
現行の政治資金規正法は政治家個人に対する企業・団体献金は禁止しているが、各選挙区に設けられた「政党支部」なる政治資金団体が事実上、その選挙区の現職議員個人のお財布として利用できる建て付けになっている。政治資金団体に対しては企業や団体から最大で1億円までの献金が合法的に可能なため、政治家個人に対する「企業団体献金の禁止」という法律の当初の目的がまったく果たせなくなっているというのだ。
政治とカネ問題の第一人者の岩井氏に、現行の政治資金規正法や公職選挙法の問題点やその影響、処方箋などをジャーナリストの神保哲生が聞いた。