2021年04月17日公開

トリチウムの人体への影響を軽くみてはならない

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ゲスト

1940年秋田県生まれ。63年東京教育大学(現筑波大学)理学部卒業。68年名古屋大学理学部分子生物学研究施設大学院博士課程修了(分子生物学)。69年同研究施設助手、名古屋大学理学部大学院生命理学科助手を経て、2004年定年退職。1990年よりNPO法人チェルノブイリ救援・中部理事。遺伝子組換え情報室代表を兼務。著書に『チェルノブイリと福島』、共著に『チェルノブイリの菜の花畑からー放射能汚染下の地域復興』。

司会

概要

 政府が福島第一原発に蓄積され続けている汚染水の海洋放出を認める決定をしたことを受けて、分子生物学者で放射性物質の人体への影響などに詳しい分子生物学者の河田昌東氏に、トリチウムの人体への影響について聞いた。

 政府は今回海洋に放出されるトリチウム汚染水はICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に則った日本の放射性物質の海洋放出の安全基準を大きく下回る水準まで希釈されることが前提となるため、人体への影響は問題がないとの立場をとっている。

 しかし、河田氏はそもそもICRP勧告はトリチウムのOBT(Organically Bound Tritium=有機結合トリチウム)としての作用を明らかに過小評価していると指摘したうえで、トリチウムの人体への影響が明らかに軽く見られていると警鐘と鳴らす。それはトリチウム水がほとんど水と変わらない分子構造をしているがゆえに、人体の組織内に取り込まれやすいという、まさに水素同位体であるトリチウム固有の性質を考慮に入れていないからだ。

 水素に中性子を2つくっつけただけのトリチウム水は、水とほとんど変わらない分子構造をしているため、容易に体内の組織に取り込まれる。人体がトリチウム水(HTO)と普通の水(H2O)の違いを識別できないからだ。しかし、体内に取り込まれたトリチウムは取り込まれた組織の新陳代謝のスピードによって体内にとどまる時間は異なるものの、長いものでは15年間も体内の組織内にとどまり、その間、人体を内部被ばくにさらし続ける場合がある。トリチウムの人体への影響はセシウムのように単に体内に存在している間だけ放射線を出す放射性物質のそれとは区別される必要があると河田氏は言うのだ。

 また、トリチウムは中性子を放出するとヘリウムに変わるが、その際にトリチウムと有機結合していた炭素や酸素、窒素、リン原子が不安定になり、DNAの科学結合の切断が起きると河田氏は言う。体内に入ったトリチウムはトリチウム自体が出すベータ線によって人体を内部被ばくにさらすことに加え、構成元素を崩壊させることで分子破壊をもたらすという、他の放射性物質とは明らかに異なる性質を持っている。それががんを始めとする様々な病変の原因となっていることが故ロザリー・バーテル博士らによって指摘されている。

 河田氏にトリチウムの人体への影響と今回の政府が決定した海洋放出の問題点などを、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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