2020年09月24日公開

新民主党は新自由主義と決別できたことが重要

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ゲスト

1973年愛知県生まれ。96年明治大学文学部卒業。2009年同大学大学院政治経済学研究科博士課程修了。博士(政治学)。国会議員政策秘書、明治大学助手、自然エネルギー財団特任研究員などを経て19年より現職。著書に『国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』、『信州はエネルギーシフトする~環境先進国・ドイツをめざす長野県』など。

著書

司会

概要

 旧立憲民主党と旧国民民主党がともに解党し、その大半が枝野幸男氏が率いる新しい立憲民主党として再結集した結果、150人からの国会議員を擁する大野党勢力が一夜にして登場することとなった。
 
 かねてから立憲民主党に政策面での助言を行い、同党のいわば理論的支柱のような存在となっている千葉商科大学の田中信一郎准教授は、今回の合流が旧民主党の再結集に過ぎないとの見方を一蹴する。

 田中氏によると、新しい立憲民主党は新自由主義との決別を明確に打ち出し、市場原理至上主義を否定するとともに、「何が何でも改革」といった改革至上主義も否定している点で、旧来の民主党とは明らかに一線を画した政党になっていると説明する。

 かつての民主党は自民党やみんなの党、維新などからの合流組や社会党からの合流組など、様々な出自の議員を内包していたため、新自由主義を明確に否定することができず、また改革という言葉は必ず入れなければならないというような前提があった。ともすれば改革のためには憲法や民主主義を否定することを辞さないという面があったと田中氏は言う。

 しかし、3年前の小池東京都知事と前原代表による希望の党騒動の際、新党からリベラル勢力が排除されたおかげで、枝野氏はかえって旧民主党のリベラル勢力を結集させることが容易になった。そして、その立憲民主党がより多くの国民から支持されたために、20年かけても中々実現しなかった民主党内の大掃除が結果的に立憲民主党へのリベラル勢力の結集という形で行われることとなった。

 理念的にスリムになった新立憲民主党は、立憲主義の立場から憲法の基本原則の尊重を党の一丁目一番地の、いわば党是とした上で、「過度な自己責任論に陥らず、格差を解消し、一人ひとりが幸福を実感できる社会」を目指すとしている。

 これは自助を前面に出す菅政権とも対立軸を明確するものでもあり、また市場原理を否定はしないものの、格差を解消したり、国民の一人ひとり(家族ではなく個人)を幸せにすることが政治の責任であると位置づけるのだと田中氏は言う。

 また、旧来の「大きな政府、小さな政府論」についても、この二項対立図式には乗らず、社会がうまく回っていれば大きな政府は必要としないので小さな政府を指向すべきだが、災害や感染症など社会が不安定化し、国民が政府の力を必要とする場面では、大きな政府となることをあえて否定もしないという考え方を「機能する政府」という言葉で表現していると言う。

 その他、分散型社会への転換、情報公開と公文書管理の徹底、公正な市場の整備、性的マイノリティなど異なる個人の包摂など、旧来の民主党の路線も踏襲されているが、新立憲民主党の綱領ではそれが旧民主党時代よりも歯切れ良く言い切ったものになっている印象を受ける。

 政治学者の田中氏に新立憲民主党の綱領の内容とその意義、旧民主党との違いなどについて、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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