日本は次の感染症への備えはできているか
弁護士
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1959年生まれ。84年東海大学医学部卒業。93年東海大学大学院医学研究科内科系専攻修了。東海大学付属病院呼吸器内科助手、英国ロンドン大学ロイヤルフリー病院、国立国際医療センター呼吸器科医長、国際疾病センター医長など経て2008年より現職。20年新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバー。
新型コロナウイルスの日本国内の感染者は1万人を超え、死亡者数も4月21日12時時点で186人(クルーズ船を除く)、重症者が232人となっている。
当初、専門家でさえ甘く見ていた新型コロナウイルス感染症が、発生から数ヶ月の間に世界中で最も恐れられるパンデミックとなってしまった。
しかし、そもそも新型コロナウイルス感染症とはどういう病気なのか。5割の感染者に症状が出ず、さらに3割には風邪程度の症状しか出ないこのウイルスが、なぜこうまで恐れなければならない存在なのだろうか。
特に新型コロナウイルスに感染した場合、肺炎にかかることで症状が重篤化し、死亡する事が多いということから、呼吸器内科が専門で日々、最前線で新型コロナウイルス感染症の患者の治療に当たっている防衛医科大学校教授・川名明彦氏を訪ねた。川名氏も新型コロナウイルス感染症が発生した当初はインフルエンザとそれほど変わらないものと軽く考えていたが、1月末になって中国が発表した感染者の肺炎の画像写真を見て、これまでとは全く違う感染症であることに気づき、強い危機感を持ったという。
川名氏はまた、感染者の5割を占める無症状感染者が、自分では無症状ながら他者にウイルスをうつしてしまう能力を持つところに、この病気の一番の怖さがあると言う。感染者が無自覚のまま、周囲にウイルスをばらまいてしまうからだ。
若い人は重篤化しないとか、死亡するのは高齢者だけなどの情報が乱れ飛んでいるが、川名氏は若い人も含めて、できる限り新型コロナウイルスに感染することを避けるよう努力をすべきだと語る。また、仮に感染することがあったとしても、できる限りそのタイミングを遅らせるべきだと言う。そうすることで、感染爆発による医療崩壊を防ぐことができ、それが結果的に感染者自身が適切な医療を受けられることにつながる。また、数年後にはワクチンや治療薬が開発される可能性もある。
川名氏によると、現時点では新型コロナウイルスに対する抗ウイルス薬がないため、医療現場ではさまざまな形で既存の薬などが試みられてはいるが、最終的には自然治癒の力で回復するしかないのが現状だという。人工呼吸器などはあくまで自然治癒を補助するための装置にすぎないのだと川名氏は言う。
呼吸器内科が専門で100年前のスペインインフルエンザ(通称スペイン風邪)や、2003年のSARSの調査を行ってきた経験を持つ川名氏に、ジャーナリストの迫田朋子がインタビューした。