政府のタバコ規制は必要か
神奈川県知事
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1958年神奈川県生まれ。82年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。同年松下政経塾入塾(第3期生)米・下院議員政策スタッフ、メリーランド州司法長官スタッフ、神奈川県議などを経て93年衆院初当選(新生党・旧神奈川2区)。2003年神奈川県知事(2期)。13年より現職。著書に『JT、財務省、たばこ利権 日本最後の巨大利権の闇』、『教養として知っておきたい二宮尊徳』、共著に『首相公選で日本の政治は甦る』など。
モリカケで揺れ続ける国会だが、その裏で数々の重要な法案が審議されている。
来週木曜からは受動喫煙を防止するための措置を含む健康増進法改正案の審議が始まる。しかし、今国会に提出されている政府の受動喫煙防止法案は、全くのザル法だ。店内を全面禁煙としなければならない対象から床面積100㎡以下の飲食店と、資本金5000万円以下の事業者を除外しているため、全体の45%の飲食店しか禁煙措置の対象とはならない。ファミレスなど一部の大型店舗を除く大半の飲食店では、これまで通り自由に喫煙が可能だ。
タバコの健康被害のデータは十分過ぎるほど揃っている。特に最近は受動喫煙の健康被害の深刻さがより明らかになっている。喫煙者本人はともかく、非喫煙者がタバコの健康被害を受ける状態は、オリンピックの有無にかかわらず、一刻も早く解消される必要がある。
にもかかわらず、なぜ政府はこのようなザル法しか出せないのか。その最大の理由はタバコ利権にあると、参院議員の松沢成文氏は言う。
神奈川県知事時代に全国に先駆けて受動喫煙防止条例の制定を実施した松沢氏は、財務省、JT、族議員、葉タバコ生産者・タバコ小売点、飲食店の4者の間で持ちつ持たれつの関係にあるタバコの利権構造は日本最強にして最大の利権だと言う。財務省とJTからの間ではタバコ税で2兆円以上、財政投融資に回るJTの配当金の700億円が上納されるのに対し、財務省はJTの国内独占を認め、族議員は生産者や小売業者、業界団体から政治献金や選挙の活躍を受ける。無論、地元選挙区への予算配分権を持つ財務省は族議員にとっては怖い存在だ。
明治の大蔵省専売局時代まで遡るタバコの専売事業を前提とする利権構造が、JT民営化の後も続いているのだ。
そして、JTはメディアに毎年200億円以上の広告出稿をしているため、主要メディアもタバコ問題を真剣に取り上げようとしない。
このままでは2008年の北京五輪から実現してきたスモークフリー五輪の伝統が、2020年の東京大会で途切れ、日本は世界に恥を晒すことになりかねない。
松沢氏に、タバコ利権の強大さと、受動喫煙を規制することの困難さについて、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。