裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
神戸学院大学法学部教授
弁護士、元検事
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1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。同年三井鉱山入社。80年司法試験合格。83年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事などを経て2006年退官。桐蔭横浜大学法科大学院教授、名城大学教授などを経て2012年郷原総合コンプライアンス法律事務所を設立し代表に就任。著書に『思考停止社会』、『法令順守が日本を滅ぼす』、『青年市長は“司法の闇”と闘った』など。
特捜部が、リニア中央新幹線の工事をめぐり「談合」を行っていたとして、受注社の大成建設の元常務ら2人を逮捕したことに対し、元特捜検事で弁護士の郷原信郎氏は、検察の捜査手法を「言うことを聞かないやつは逮捕する強権的なもの」と批判した。
東京地検特捜部は2018年3月2日、独占禁止法違反の疑いで大成建設の大川孝元常務と、鹿島建設の大沢一郎専任部長を逮捕した。
両氏は、リニア中央新幹線の品川駅と名古屋駅の新設工事で、大林組や清水建設の担当者らと、事前に受注業者を決めるなど談合した疑いが持たれている。
郷原氏が問題視するのは、逮捕された大川、大沢両氏が勤務している大成建設と鹿島建設の2社が、特捜部が見立てた談合の事実を認めていなかったことだ。報道によれば、リニア工事の主要受注社4社のうち、大林組と清水建設は談合の事実を認めた一方で、大成建設と鹿島建設はその事実を否定していたという。
郷原氏は対象となる4社はいずれも4社間の協議や情報交換等の「外形的事実」は認めていたが、大成、鹿島はその行為が独禁法違反には当たらないと主張していたとされることを指摘した上で、外形的な事実を認め、その解釈で争う姿勢を見せている両社の幹部が、証拠隠滅を図る恐れがあるとは到底思えないにもかかわらず、逮捕・身柄拘束という強権を発動したことは、特捜部が自分たちの見立て通りに罪を認めようとしない相手には捜査権限という力によって屈服させようようとしていることに他ならならないと、これを厳しく批判した。
今回は工事の発注主体がJR東海という民間企業を対象としているため、国や公共団体の競売や入札価格を不正に操作する刑法の談合罪は適用されない。郷原氏はその点を強調した上で、特捜部が無理矢理適用しようとしている、独占禁止法の「談合」にあたる「不当な取引制限」の立証には相当の無理があるとして、捜査の先行きに懸念を示した。
元特捜検事で、公正取引委員会に出向の経験も持つ郷原氏に、リニア談合事件の問題点と今後予想される展開をジャーナリストの神保哲生が聞いた。