裏金が作り放題の政治資金規正法の大穴を埋めなければならない
神戸学院大学法学部教授
弁護士、元検事
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1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。同年三井鉱山入社。80年司法試験合格。83年検事任官。公正取引委員会事務局審査部付検事、東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事などを経て2006年退官。桐蔭横浜大学法科大学院教授、名城大学教授を経て14年から現職。著書に『検察が危ない』、『検察崩壊 失われた正義』など。
安倍首相は11月21日、衆議院を解散した。
消費税の税率引き上げの時期を延期し、アベノミクスを争点に「信を問う」と宣言して総選挙に打って出るのはいいが、果たしてそのような解散は憲法上許されているものなのだろうか。
「憲法第7条によって衆議院を解散する」
11月21日の衆議院本会議で伊吹文明衆院議長が、紫の袱紗に包まれた天皇陛下の解散詔書を読み上げたように、今回の衆院解散は内閣不信任案可決による解散を定めた憲法第69条による解散ではなく、天皇の国事行為を定めた憲法第7条による解散だった。
憲法第7条は天皇が行う国事行為として、憲法改正や法律の公布、国会の召集、条約の認証、恩赦の認証などと並んで、その3に「衆議院を解散すること」をあげている。そして、憲法第3条で、すべての天皇の国事行為は「内閣の助言と承認を必要とし」と定められていることから、いわゆる7条解散というのは、内閣の助言によって天皇が自ら解散を行った形が取られているものだ。
弁護士で関西大学大学院特任教授の郷原信郎氏は、1952年の戦後初の憲法第7条による衆院解散をめぐる最高裁判決を参照した上で、「首相が好きなときに自由に衆議院を解散する権限が認められているわけではない」と指摘する。
この判決で最高裁は、内閣不信任案が可決した場合の憲法69条に基づく解散ではない、いわゆる7条解散について、「高度な政治性」を理由に判断を回避。これは「最終的に政治と国民が判断すべきもの」との判決を下している。
意外と思われるかもしれないが、首相の7条解散の権限については、判例でこれが合憲と解されたことは、未だかつて一度もない。それが正当なものか否かの判断は、最高裁判決によって、国民に委ねられているものなのだ。
ところで、われわれにその判断はできているだろうか。弁護士の郷原信郎氏に、今回の解散総選挙の憲法上の問題点と最高裁判決が示した「国民が判断すべきもの」の意味を、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。