日本は今、岸田総理が「戦後安保政策の転換」と胸を張る防衛ドクトリンの転換を図ろうとしている。しかし、防衛省は基本的な情報公開はもとより、公文書管理の基本的なルールすら守れていないことが、昨今の不祥事で明らかになったばかりだ。そのような状況の下で、防衛省の予算をGDPの1%から2%へと事実上倍増し、戦後初となる敵基地の攻撃能力を保有させて、本当に大丈夫なのだろうか。
元々、自衛隊を含む防衛省は、国家公務員の人員の4割以上を占める巨大官庁にして最大の行政機関でもある。組織も複雑で他の行政機関に比べて突出して行政文書数が多い。
しかし、防衛省・自衛隊はこれまで情報公開法や公文書管理法の運用に関して、防衛庁情報公開請求者リストの作成問題や南スーダンPKO日報隠ぺい問題など、他省庁に比べて政治問題を頻繁に起こしてきた。
確かに軍事や安全保障の分野は機密情報も多いため、何でもかんでも公開できないことは理解できる。しかし、例えばアメリカでは詳細に公開されている国防長官の日程さえ、日本では真っ黒な黒塗り状態でしか開示されない。その中には国会での答弁や記者会見、テレビ出演など公知の情報も含まれているはずだが、それを含めて防衛省では一切情報を外に出さないのだ。
そのように元々情報公開に対して消極さが目立つことに加え、情報公開請求に対しても決定まで長い時間をかける場合が多いなど、情報公開法の趣旨を歪めるような対応が目に付く。
情報公開に対する姿勢やその体制が未整備な官庁は、外部からの監査が入りにくく、何か問題が起きていてもそれが改善されにくくなる。ましてや防衛省はこれから予算が倍増され、自衛隊もこれまでより遙かに攻撃的な兵器を持とうとしており、シビリアンコントロールと外部監査を一層強化していかなければならない立場だ。
防衛省の情報公開や公文書管理をめぐる現状と問題について、情報クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。