第14回のディスクロージャーは2017年に情報公開クリアリングハウスが起こした情報公開訴訟を通じて、少しずつ全貌が明らかになってきた森友学園問題の核心部分と、粘り強い情報公開請求や訴訟がもたらす現実的な効果を考えた。
森友学園問題は、明らかに認可要件を満たしていなかった森友学園に国有地が格安で払い下げられた経緯や、安倍首相や昭恵夫人の関与にもっぱら注目が集まり、それが国会でも厳しく追及されたほか、メディア各社が独自に取材を展開したこともあり、財務省と森友学園の間の交渉過程など、事件の外枠についてはある程度事実関係が明らかになっている。しかし、実際に国有地がなぜあのような条件で払い下げられたのかについて、国有地の管理者である財務省内部や、財務省と近畿財務局の間、また今回対象となった土地の所有者である国交省と財務省の間でどのような協議が行われ、どのような理由であのような格安での払い下げが決められたのかといった、いわば事件の核心部分は未だにほとんど明らかになっていない。
そもそもこの事件では本来土地を保有していることが条件であるはずの小学校の設立が土地の購入前に認可されたり、土地の利用用途が確定していないにもかかわらず貸し付けが行われたり、土地の売買契約が成立する前に開発の許可が下りるなど、明らかにイレギュラーな決定が次々と下されていた。仮に安倍首相自身や首相夫人、また他の有力政治家の関与があったにしても、政府がこのような無理筋な決定を下すためには、行政機関内でそれを正当化するための協議が行われ、何らかの理論武装が図られているはずだ。政府内でどのような協議が行われ、誰の決裁によりこのような意思決定が行われたのかという点は、赤木俊夫さんを自殺に追い込んだ決裁文書の改ざん問題と並んで、この事件の核心部分とでも言うべき重要な要素と言っていいだろう。
情報公開クリアリングハウスは、2017年に交渉記録の情報公開訴訟を提起し、6年経った今も東京地裁で係争中だ。裁判の過程では、当初は真っ黒に塗られたのり弁状態の文書しか出てこなかったが、訴訟が進むにつれて部分的に開示される文書も出てきている。これまで開示された文書は、政府内部の意思決定の過程を詳らかにするためにはまったく不十分なものだが、裁判での地道な公開請求を通じて、これまで明らかになっていなかった事件の核心部分がおぼろげながら浮かび上がりつつある。
今回のディスクロージャーでは6年越しの地道な情報公開訴訟を通じて、これまで何が開示され何が依然として不開示なのか、開示された文書から何が見てきたのか、また行政機関が自分たちにとって不都合な文書をどのような理由で非開示としているのかなどについて、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。