2018年11月08日公開

悲惨な事故を起こした企業には刑事責任を負わせるべきだ

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ゲスト

1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒。三井鉱山勤務を経て80年司法試験合格。83年検事任官。東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事、東京高検検事などを経て、2006年退官。08年郷原総合法律事務所(現郷原総合コンプライアンス法律事務所)を設立。10年法務省「検察の在り方検討会議」委員。著書に『「深層」カルロス・ゴーンとの対話:起訴されれば99%超が有罪となる国で』、『検察崩壊 失われた正義』など。

著書

概要

 悲惨な事故や事件の犠牲となった遺族らの真相究明を望む声が、司法を動かすかもしれない。

 JR福知山線脱線事故や笹子トンネル天井板崩落事故被害者の遺族らが中心となり発足した「組織罰を実現する会」は10月26日、山下貴司法務相と面会し、1万150人分の署名とともに法人の刑事責任を問うことを可能にする両罰規定を盛り込んだ特別法の早期審議を求めた。

 両罰規定とは、事業主たる法人の代表者や従業員などが違反行為をした場合に、直接の行為者と同時に法人も処罰の対象とする法律上の規定のこと。すでに個人情報保護法や著作権法、消防法、独占禁止法など多くの法律に両罰規定の条文が設けられているが、刑罰の対象が自然人であることを前提とする刑法にはその制度がないため、重大な事故を起こした企業などに対して刑事責任を問うことができない状態が続いていた。

 JR福知山線脱線事故や笹子トンネル天井板崩落事故、軽井沢スキーバス転落事故、関越自動車道高速ツアーバス事故などの悲惨な事故が起きるたびに、事故を起こした企業の幹部の責任が問われるが、事故の予見可能性を立証するのは困難なこともあり、多くの事故では誰も罰されないまま終わることが多かった。

 「実現する会」の顧問を務める郷原信郎弁護士は、刑法に両罰規定を導入するためには、法制審議会の議論などを経ねばならないため、かなりハードルが高いが、業務上過失致死傷罪に限って両罰規定を導入することは国会の議決だけで可能であり、現実的に十分可能だと語る。

 業務上過失致死傷の両罰規定が導入されれば、法人の幹部個人に対して業務上過失致死傷罪が成立する場合、同時に法人の刑事責任も問うことができるようになる。これは被害者や犠牲者遺族の処罰感情に報いると同時に、法人の刑事罰は罰金という形で実施されるため、安全対策など企業のコンプライアンスが進み、事故の再発防止にも役立つことが期待できると、郷原氏は語る。

 郷原氏に両罰規定導入にって期待される効果や実現可能性などについて、ジャーナリストの神保哲生が聞いた。

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