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2019年4月20日
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日本が人質司法をやめられないわけ

今村核氏(弁護士)
マル激トーク・オン・ディマンド 第941回(2019年4月20日)

 日産のゴーン元会長の逮捕・勾留を機に、日本のいわゆる人質司法に対する国際社会からの批判が高まっている。

 「日本には日本の制度があり、他の国と異なるからといってこれを批判するのはおかしい」と、東京地検の久木元伸次席検事は会見で反論しているが、それにしても長期の勾留によって被告を精神的に追い詰め、半ば強制的に自白をさせることで有罪を勝ち取っていくという現在の人質司法の手法を、単に「日本独自の制度」ということで正当化することは難しいのではないだろうか。

 他の先進国ではあり得ないほどの長期にわたる勾留に加え、弁護士の立ち会いも認められず、録音録画もされていない密室での長時間に及ぶ取り調べ、警察署内に設けられた劣悪な環境の代用監獄、被疑者が勾留され反論ができない状態に置かれた中で記者クラブメディアと警察・検察が一体となり被疑者を社会的に抹殺するような一方的なリーク報道の垂れ流し等々、中身を列挙する限りとても近代国家とは思えないような非人道的、かつ被疑者、被告人に非常にアンフェアな刑事司法制度が、未だに日本では横行しているといわざるを得ない。

 そもそも、一旦起訴されたら最後、99.9%の確率で有罪になる日本では、犯行を否認して無実を主張しても、ほとんどが有罪になる。しかも、否認すれば、いつまでも勾留が続き、判決でも「反省の態度が見られない」との理由から、更に量刑が重くなるというおまけまでついてくる。どのみち長期の勾留で仕事も失い、リーク報道によって社会的な地位も失っている。否認しても何のメリットもないのなら、実際に犯人であろうが無かろうが、犯行を認めて勾留を解いてもらい、一秒でも早く家に帰りたいと考える被疑者が大勢いても不思議ではないだろう。

 こうしてこの人質司法が、冤罪の温床となってしまう。実際、過去の著名な冤罪・再審事件を見ても、ほぼ例外なく被疑者は虚偽の自白をしている。高圧的で無茶な取り調べも行われていたし、お約束のように被疑者を犯人と決めつけたリーク報道も盛んだった。

 以前にマル激に出演した元検事の市川寛氏は、検察が高圧的な取り調べでなんとか自白を取ろうとする背景には、日本の警察・検察が自白抜きでも有罪にできるだけの客観的な証拠を収集する能力に欠けているからだと指摘しているが、逆の見方をすれば、どんな無茶な取り調べをしようが、自白さえ取れれば、被疑者を有罪にすることができるのが日本の裁判なのだ。

 長年、冤罪事件の弁護を手がけてきた今村核弁護士は、捜査の全課程の「記録化」と「証拠開示」の必要性を訴える。具体的には、現在ほぼ自動的に23日間勾留できる代用監獄制度を廃止し、被疑者の身柄拘束期間や取り調べ時間を規制し、取り調べに対する弁護人の立会権を保障するなど、非人道的かつ無茶な捜査を制限する必要があると言う。もっとも、今村弁護士があげる諸条件は、いずれも他の先進国ではデフォルトといっていいものなのだが。

 その上で、捜査の全過程の記録化、被疑者ならびに参考人取り調べの全過程の録音・録画、物証の採取、保管過程の記録化、再鑑定の保証、被疑者、被告人に有利になり得る物証の収集・保全の義務化と証拠の全面開示の義務化など、現在の警察や検察に一方的に都合よくできている制度を、被疑者や被告人の権利を保障するものに変えていく必要があると語る。

 マル激では「メディア」「司法」「教育」を「日本の三大悪」と呼び、日本が変われない根源的な原因として問題視してきた。特に国家権力が最も暴走しやすい刑事司法制度は、その国の民主主義の成熟度のバロメーターとなる。国連の拷問禁止委員会で「中世並」とまで酷評されながら、これまで一向に変わる気配が見られなかった日本の刑事司法が、ゴーン事件が国際的な注目を浴びたことで、これまでにない大きな局面を迎えていることは間違いないだろう。

 日本の司法はなぜ一向に変わらないのか、どこに問題の根源があるのか、これを変えるためにどこから手を付けるべきなのか、などについて、今村弁護士と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

 
今村 核(いまむら かく)
弁護士
1962年神奈川県生まれ。88年東京大学法学部卒業。92年弁護士登録。同年より旬報法律事務所に所属。自由法曹団司法問題委員会委員長、日本弁護士連合会全国冤罪事件弁護団連絡協議会座長などを兼務。著書に『冤罪と裁判』、『冤罪弁護士』など。

 

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