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2018年05月12日公開

食品ロスを減らすためにできること

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第892回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

食品ロス問題専門家・ジャーナリスト
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東京都生まれ。奈良女子大学食物学科卒業。2006年女子栄養大学大学院博士課程修了(栄養学)。15年東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程修了(農学)。ライオン(株)、青年海外協力隊、日本ケロッグ広報室長などを経て、12年(株)office3.11を設立し、代表に就任。著書に『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』、『一生 太らない生き方 普通に食べてスリムになる方法』など。

著書

概要

 現在、地球には世界の全人口にあたる74億人のお腹を満たすのに十分な食料が生産されている。しかし、国連WFP(世界食糧計画)によると、今でも世界では8億人あまりの人々が、飢えに苦しんでいるという。その大きな悪因となっているのが、世界の食料生産の総量の約3割にあたる13億トンの食料が毎年廃棄されているという「食品ロス」問題だ。

 特に先進国では莫大な量の食品が捨てられたり、食べ過ぎによって生活習慣病や成人病に苦しむ人が急増する一方で、途上国では9人に一人が飢えに苦しみ、3人に1人が慢性的な栄養不良の状態に置かれている。単純に対比できるものでもないかもしれないが、奇しくもアメリカでは肥満の人の割合が人口の3分の1を超えている。

 また、途上国では先進国とは異なり、飽食による食品ロスは少ないが、冷蔵設備や道路の未整備など貧弱なインフラなどが原因で、大量の食料が生産段階で廃棄されているという現実もある。

 日本でも食品ロスの問題が叫ばれるようになって久しい。余った食品を必要な人に届けるフードバンクなどの試みがメディアに取り上げられる事も多くなった。2008年には農水省内に「食品ロスの削減に向けた検討会」が設置され、様々な施策が模索されている。しかし、実際には日本の食品ロスはあまり改善されていない。

 現在、日本は年間約646万トンの食品を廃棄している。これは全世界の食糧援助の総量を遙かに凌ぐほどの量だ。お米に換算すると、日本の全国民が毎日ご飯をご飯茶碗1杯分ずつ廃棄している計算になる。

 それにしても、「まだ食べられる食品を捨てる」などという、経済面から見ても倫理面から見ても、どこからどう見ても正当化できない食品ロスを、なぜわれわれは減らすことができないのだろうか。

 日本の食品ロスの内訳を見ると、家庭からの廃棄が289万トン、製造や流通、小売など事業者による廃棄が357万トンと、家庭系と事業系がほぼ半分ずつを占め、先進国の中では相対的に家庭の食品ロスが多い。

 事業系のロスは、豊作の年に生産調整のために農産物を廃棄するケースや、サイズや色が基準と違っていたり、傷が付いているものなど、規格外の商品が廃棄されるケースや、売れ残りによってメーカーに返品された商品、パッケージの印刷ミスなどを原因とする規格外品が廃棄されている。外食店での食べ残しや、需要予測を誤って材料を仕入れ過ぎたことによる廃棄も、決して少なくない。

 一方、家庭系では単に買い過ぎによる廃棄や、賞味期限切れのほか、食べ残し、知識不足や技術不足から本来は食べられる部位を捨ててしまうケースなど、やはり原因は多岐にわたる。

 また、事業者と家庭に共通した原因もある。それが賞味期限問題だ。牛乳パックを僅かでも日付が新しい奥の方から取ろうとする買い物客の姿を見かけることが多いが、日本では特に消費者が商品の賞味期限を過剰に意識するため、賞味期限が1日でも過ぎた物は簡単に廃棄されてしまう傾向にある。消費期限と異なり、賞味期限はその日までに食べなければ危険という意味ではないが、その違いが必ずしも周知されていないのだ。食品によっては必ずしも新しい方がいいというものばかりではないことも、もう少し認識される必要があるかもしれない。

 消費者の過剰な賞味期限へのこだわりは、事業者サイドにも大きな影響を与えている。『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』の著者で食品ロスの問題に詳しい井出留美氏によると、日本の食品業界には消費者の敏感な賞味期限意識に対応するために、「3分の1ルール」なる不文律があるのだという。これは卸売業者はメーカーから賞味期限全体の最初の3分の1を過ぎたものは買わないし、小売店は賞味期限の3分の2を過ぎた商品は卸から買わないというものだそうだ。

 つまり、賞味期限が6ヶ月あるお菓子は、メーカーから卸には必ず最初の2ヶ月以内に卸されなければならず、それを過ぎれば卸売業者は商品を受け付けないので、廃棄するしかなくなる。同じく、小売店は賞味期限が2ヶ月以上残っている商品しか卸売業者から買わない。そのような業界内ルールによって、まだ賞味期限が大幅に残っている食品が流通の過程で大量に廃棄されているのだという。

 3分の1ルールによって、卸からメーカーに返品される食品の総額は年間821億円にものぼるという。同じく小売が3分の1ルールを理由に卸に返品する商品の総額も432億円だというから、1200億円分の食品が、あまり意味のわからない不文律によって廃棄されていることになる。ここで生じた経済的ロスは、最終的には消費者が何らかの形で負担することになるのは言うまでもない。

 事業系にしても家庭にしても、食べられる食品を廃棄してもいいことは何もない。また、そもそも事業系の厳しい廃棄基準が、一体誰のためのものなのかも今ひとつ不明だ。家庭においても、賞味期限と消費期限の違いを知ることで、賞味期限が絶対的なものではないことを理解するなど、まだまだできることは山ほどありそうだ。

 長年食品ロス問題に取り組んできた井出氏とともに、食品ロスが減らない生産、流通、消費の構造的問題や、フードバンクのような余った食品を必要としている人たちのために活かす活動について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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