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2013年11月02日公開

食品表示の偽装はなぜ問題なのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第655回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

食の安全・安心財団事務局長

1949年東京都生まれ。68年長野中央高校(現長野日大高校)卒業。同年農林省(現農林水産省)入省。食品流通局食品油脂課長、近畿農政局消費生活課長、消費・安全局企画監視室長などを歴任。雪印食品の国産牛肉偽装事件、ミートホープの牛ミンチ偽装事件など食品偽装問題を担当。2011年8月退官。同年10月より現職。著書に『食品偽装との闘い - ミスターJAS10年の告白』。

著書

概要

 阪急阪神ホテルズによるメニューの表示偽装問題がメディアを賑わしている。確かに「フレッシュジュース」、「信州そば」、「手作りチョコ」などの表記からわれわれが受ける印象と商品の実態に大きな開きがあったことは問題かもしれない。偽装は不当な利益を貪る行為の誹りは免れないし、食品表示に対する消費者の信頼を揺るがしかねない。
 しかし、今回の偽装問題は過去にあった賞味期限切れの食材や無認可の化学加工剤を使っていたケースのような、食の安全に直接関わる問題ではない。言うなればブランドの偽装だ。それが、ここまで大きく消費者の関心を引く背景には、食品表示全般に対する根深い不信感があるのではないか。
 かつて農林水産省の食品表示Gメンとして数々の食品偽装を監視・摘発してきたゲストの中村啓一氏は、一連のメニュー偽装は、法律に基づく食品表示の偽装とはやや次元が異なるとの考えを示す。JAS法などに基づく食品表示のルールは、消費者に食の安全性などに関する判断材料を提供するためのもので、対面販売やレストランのメニューの表示のような、グルメ的嗜好を満たすものとは異なる。
 例えば、一度冷凍したマグロを解凍して「鮮魚」として売る行為は偽装に当たるのか、信州そばとは長野県産のそば粉を使っているという意味なのか等々、メニュー表示については不明瞭な部分も多く、法律によってどこから先が違法になるのかが、明確に定められているわけではない。
 しかし、中村氏はどんな形であれ食品表示の偽装が、本物を生産・製造している生産者に損害を与えるという意味では許されるべきではないと言う。食品偽装は、偽装をする事業者が不当な利益を得る一方で、消費者を騙す行為だが、同時に、偽装ではない本物のブランド品を製造する生産者にも損害を与える点が見落とされがちだ。消費者のグルメ的嗜好を欺くメニュー偽装の場合も、消費者に対する裏切りであると同時に、本物のフレッシュジュースや信州そばの生産者にとっては、偽物を本物のように扱われたためにブランドに傷が付いたり、本物が売れなくなったりしたら大きな損害となる。
 中村氏によると、食品表示に対する消費者の意識は2001年に国産牛の感染が確認されたBSE問題が大きな契機だったという。それまでは食材の産地などは、例えば松阪牛、黒毛和牛などといったあくまでも高級そうなブランドイメージとして認識されていたが、BSE問題をきっかけにして食品表示が「食の安全」とリンクして考えられるようになったのだそうだ。
 その後、雪印食品による牛肉偽装事件や、全農チキンフーズによる鶏肉産地偽装事件、ミートホープによる牛ミンチ偽装事件、不二家による賞味期限や製造日の偽装問題、「一色うなぎ」を騙ったうなぎの産地偽装事件、事故米不正流通事件など食品表示の偽装問題が相次ぎ、消費者の食品表示に対する不信感が高まった。
 食品の偽装が発覚すると、偽装をした企業や小売店は信用を失い業績が悪化する。多くの場合、倒産したり、店をたたむことになるが、それだけのリスクを冒してでも偽装は後を絶たない。なぜ食品表示の偽装はなくならないのか。中村氏は3つの原因を指摘する。まず取引先からの単価削減要求を飲まざるを得ないケースで、これは高価値のブランド産地食品などを原価の安い食品で代替させたり、製造原価を抑えるために賞味期限の切れた食材をあえて使用したりするという。次いで無理をしてでも商品数をそろえて納期に間に合わせなければならないケースでは食品の産地などを偽装して商品数の帳尻を合わせるなどの不正が行われやすい。そして3つ目は最初から偽装による不正利益を目的とするケースで、うなぎの産地偽装や事故米不正流通事件などはこれに相当する。偽装は必ずしも最初から悪質なものばかりではないということのようだが、中村氏によると、最初はやむにやまれぬ理由で偽装をしてしまった場合でも、その後、「旨味を知って、より悪質になっていったケースも多い」そうだ。
 今年6月に食品衛生法やJAS法、健康増進法などにバラバラに規定されていた食品表示を一つの法体系に束ねた食品表示法が成立し、2年間の猶予期間を経て2015年までに施行されることになっている。一連のメニュー偽装で明らかになったグルメ嗜好な消費者の利益を守ることももちろん重要だが、新しい食品表示法を真に食品の安全に寄与するものにしていくための議論は急務だ。そのためには、どのような情報開示を法律で規定すべきなのか、消費者側に求められる姿勢とはどのようなものか、消費者が本当に必要な情報を得られるシステムとはどのようなものなのか。食品偽装の実情を知り尽くしたゲストの中村啓一氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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