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2012年06月23日公開

震災ガレキを広域処理してはならないこれだけの理由

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第584回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

1946年愛知県生まれ。70年電気通信大学電気通信学部卒業。アジア経済研究所を経て86年環境総合研究所を設立、代表取締役に就任。2012年より現職。東京都市大学名誉教授。著書に『ダイオキシン汚染』、共著に『審議会革命』など。

概要

 被災地に積み上げられたガレキの山を背景に、被災地の復興のために、みんなでガレキを分かち合いましょうのキャッチコピー。これは環境省が、昨年から総額39億円をかけて進めてきた震災ガレキの広域処理推進キャンペーンの一貫として、今年の春に一部全国紙に掲載した全面見開き広告だ。このガレキの山のイメージはテレビでも繰返し放送され、被災地を助けるためにはある程度のガレキ受け入れはやむなしとする世論の形成に一役買ってきた。

 廃棄物処理に詳しい環境総合研究所顧問の青山貞一氏は、一貫して震災ガレキの広域処理に反対してきた。環境省を中心とした世論誘導を横に置いたとしても、あらゆる公共政策は、常に「必要性」、「妥当性」、「正当性」の3つの観点から検証されなければならいと指摘した上で、今回の広域処理は必要性も妥当性も正当性も無いと青山氏は主張する。

 震災後のガレキは総量数千万トンとも言われ、岩手県や宮城県単独で処理するためには十数年かかるとの試算が政府から出された。まず、青山氏は、その多くが津波で海に流され、また被災地内に仮焼却炉が多数建設されるなどしたため、もはや広域処理の必要性が失われていると言う。実際に被災地を歩いてい見ると、もはや市街地に大量のガレキが積まれたところはほとんど見つからない。新聞広告などが主張している「ガレキが復興の妨げになっている」という理由付けは、もはや現実を反映していない、と青山氏は言う。

 また、環境省は「基準値以下」を強調するが、放射性物質が付着したガレキを日本各地に移動することは汚染をいたずらに拡散し最終処理をより困難にするだけだと言う。

 環境省の安全基準にも疑問がある。環境省のガイドラインでは、1キログラム当たり8,000ベクレル以下であれば普通ゴミとして処分してよいことになっているが、そもそもこの基準は最初から高すぎる上に、ガレキ処分後に起こり得る生体濃縮なども考慮に入れていないと青山氏は言う。

 更に、今回のガレキ広域処理は大手ゼネコンの懐を暖めるばかりで、被災地の支援に必ずしも回っていない。巨額の広告費にものをいわせた世論誘導と情報操作によって、広域処理は環境省版ゼネコン利権を生むだけではないか、と青山氏は言うのだ。
 そもそも今回、広域処理を提言した環境省の「災害廃棄物安全評価検討会」は、非公開の秘密会議方式で決定した。青山氏らが議事録の開示を求めたところ、記録を残すこと自体をやめてしまったという。

 マスメディアも39億円にのぼる広域処理推進キャンペーン予算に群がり、ガレキの広域処理にまつわる問題点はマスメデイア上ではほとんど取り上げられなくなっている。

 そもそも必要性がなくなったプロジェクトに3年間で総額1兆円超もの予算が投じられ、それがゼネコンやマスコミにとっても新たな利権となったために、もう誰にも止めらない状態に陥ってしまっていると言うわけだ。

 20日に北九州市が西日本で初めてガレキの受け入れを表明するなど、本格的に動き始めた震災ガレキの広域処理の問題点などについて青山貞一氏を招き、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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