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2012年03月17日公開

年金問題の本質

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第570回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

学習院大学経済学部教授

1970年兵庫県生まれ。94年上智大学経済学部卒業。同年日本銀行入行。98年退職。経済学博士。社団法人日本経済センター研究員、東京学芸大学准教授などを経て09年より現職。著書に『だまされないための年金・医療・介護入門』、『年金は本当にもらえるのか?』など。

著書

概要

 年金が危ない。このままでは早晩破綻することがわかっているのに、誰も手を打とうとしない。野田政権が消費税増税という政治的なコストを払ってまで意欲を見せる「社会保障と税の一体改革」は年金問題の本質にはまったく切り込んでいない。

 年金制度に詳しい学習院大学の鈴木亘教授によれば、本来950兆円ほど積み上がっているはずの年金積立金が、110兆円程度しか残っていない。しかも、年金は保険料を支払う労働人口の減少と受給する高齢者の増加のために、毎年赤字が膨らみ続けている。つまり、今も僅かに残った100兆円あまりの年金積立金を切り崩しながら運営されているため、今後、さらに少子高齢化が進めば、2030年代には積立金が枯渇し、年金が支払えなくなることが確実だと言う。

 現行の年金制度は2004年に「100年安心プラン」などという触れ込みで改変され、国庫負担金も3分の1から2分の1に増額された。それが、あと20年と持たずに破綻が確実な状態にあると言うのだ。

 しかし、さらに問題なのは、今回野田政権が提案している「社会保障と税の一体改革」は、現行の年金制度が抱える根本的な問題には何ら手をつけていないことだ。消費税を増税をして「社会保障と税の一体改革」なるものが断行されたとしても、はやり年金が2030年代には払えなくなることに変わりはない、と鈴木氏は言う。

 年金問題の本質とは何か。鈴木氏は、政府は現行の年金制度を「賦課方式」などという言葉でごまかしているが、もともと賦課方式ではなかった。しかし、1970年代に給付を大盤振る舞いしたために、積立金が切り崩されてしまい、結果的に賦課方式のような形になっているだけだと指摘する。その大盤振る舞いによって生じた800兆の債務を確定させ、それを何らかの形で返済することで、年金を再び本来の積み立て方式に戻すことこそが、年金問題の本質だと言う。

 現在の「疑似賦課方式」では、今後、少ない若者が多くの老人を支えなければならなくなる。その若者たちは、「1人の若者が1人の老人を支える」ぼどの重い負担を強いられた上に、自分たちが年金受給年齢に達した時には、自分たちが払ってきた保険料すら回収することすらできなくなる。年金は破綻が必至な上に、重大な世代間格差問題を抱えている。しかし、年金を従来の積み立て方式に戻すことができれば、人口の動態にかかわらず、自分が支払った保険料は老後、必ず受け取ることができるようになるし、少ない若者が多くの老人を支えなければならないなどという、世代間のアンフェアな分配も解消される。

 鈴木氏は過去の大盤振る舞いのために消えてしまった総額800兆円からの年金積立金の欠損、つまり債務を埋めるためには、債務を年金会計から分離し、100年単位の時間をかけて税金によって補填していく方法しかないだろうと言う。

 しかし、はたして今の政治に800兆の債務を解消して、一旦不作為によって賦課方式に陥ってしまった現在の年金制度を、再度、積み立て方式に戻すなどという大技が期待できるだろうか。800兆の債務を分離し、ぞれを税で返済するという話になれば、当然その大穴を作った厚労省の責任問題も浮上する。また、税方式に移行することになれば、年金の管理が厚労省から財務省に移ってしまうため、厚労省は何が何でもこれに抵抗してくるはずだ。

 ということは、このような提案は、年金を管轄している厚労省からは、何があっても出てくるはずがない。経済財政諮問会議のような形で、厚労省外部からこのような年金改革案があがってくる枠組みを作り、さらに厚労省の徹底抗戦に遭いながらそれを断行するためには、想像を絶するほどの政治力が必要になるだろう。しかし、それができなければ800兆の債務はさらに大きく膨らみ続け、積立金が枯渇した段階で年金が払えないという事態を迎えることになる。

 鈴木氏と、現在の日本の年金制度が抱える本質的な問題は何かを考えた。

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