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2011年06月18日公開

原発震災を防げなかった本当の理由とは

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第531回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

1955年長崎県生まれ。1980年東京大学法学部卒業。同年通産省入省。経済産業政策課長、中小企業庁経営支援部長などを歴任の後、2008年福田政権下で国家公務員制度改革推進本部審議官に就任。2009年12月より現職。著書に「日本中枢の崩壊」がある。

著書

概要

 この震災、とりわけ原発震災は本当に防げないものだったのだろうか。また、仮に想定外の大地震と大津波によって原子炉の一部が破壊されたとしても、その後の被害がここまで拡大することを防ぐことはできなかったのだろうか。
 3月11日の震災以前から、日本では官僚のあり方がたびたび問題にされてきた。戦後復興から高度成長にかけての「欧米に追いつけ、追い越せ」の時代は、政府の意思決定を官僚に任せておけばよかった。しかし、その後日本が成熟社会への転換を図らなければならない局面を迎えた時、官僚が牛耳る「おまかせ政治」のままでは方向転換ができないと言われて久しい。
 一昨年の政権交代では、民主党が脱官僚を旗印に政権を奪取したが、その後の「政治主導」の迷走によって脱官僚のスローガンは大幅にトーンダウンしてしまった。
 今回の震災とその後の対応、とりわけ東京電力の賠償スキームなどを見る限り、官僚機構の問題点が何も解決されていないことは明らかだ。そうした中、この震災は、これまでわれわれが手をこまねいてきた政治や行政の問題点が、一気に吹き出したものであり、同じような悲劇を繰り返さないためには、国家公務員制度の改革が急務であると公言してはばからない現役官僚がいる。それが経済産業省の古賀茂明氏だ。
 古賀氏は今回の原発震災の背後に、官僚の前例踏襲主義、年功序列、そして天下りといった官僚機構特有の弊害があったことは否定できないと指摘する。専門家から原発の安全基準の脆弱性が指摘されていても、安全基準を強化することは先輩官僚のやってきたことの否定につながるからできない。脱原発は電力の自由化につながるため、無数の天下りポストを提供してくれてきた電力業界に対して、そのようなことを言い出せる官僚などいない。結果的に日本の原子力政策は、十分なチェックが入らないままここまで続けられてきた。そして、その結末が、今回の原発震災ということになる。
 古賀氏の論理は明快だ。政治家は選挙で、一般企業は消費者や株主などから常に厳しいチェックを受けているが、役所は外部からチェックを受けることがない。そのため内向きの論理が働き、優秀な官僚ほど省益のために働くようになる。省の人事を省自身が握っている以上、国民益ではなく省益に尽くした官僚が出世するのも当然のこととなる。そこで言う省益とは、天下りポストの増設であり、予算の拡大でもある。
 天下りを含めて約50年、自分の一生を保証してくれる組織に忠誠を誓い、省益の拡大に尽力すれば、自らの官僚人生は安泰だ。しかし、一方で、一旦これに歯向かえば、破滅的な災いがその人の官僚人生に降りかかる。そのような条件のもとで、一体誰が正論や改革などを訴えようか。
 踏み込んだ改革を訴えたために、大臣官房付なる待ちポストに1年半も留め置かれている古賀氏は、この仕組みの中にいると少しずつ感覚がマヒし「普通ならおかしいと思うことが普通に思えてくる」と話す。そのような仕組みの下では、どんな正論が出てこようが、官僚たちにとってこれだけ旨味のある原発が、止まるはずもなかった。
 脱官僚を訴えて政権の座についた民主党は、個々の政治家の能力の低さと経験の無さ故に、財務省の力を借りなければ予算一つを通すこともできず、結果的に民主党政権はことごとく財務省に取り込まれてしまったと古賀氏は指摘する。その財務省は、経済成長など全く念頭に無く、財政再建の名の下にもっぱら増税の機会を狙っている。今の公務員制度では、真に日本の国民に奉仕する官僚は生まれてこないし、今の民主党政権のままでは、政治主導など夢のまた夢だと古賀氏は言う。
 では、これから日本をよくするためにどのような国家公務員改革をすべきか。それには官僚が国民のために働く仕組み作りが必要となる。内閣人事局による幹部人事の一元管理、幹部職員の身分保障の廃止、民間人の登用など、自民党政権下で公務員制度改革に取り組んできた古賀氏は多くの案を出すが、その要諦は官僚が省のためではなく、国民のために働く仕組みを作ることと、若い人たちが活躍できる仕組みに変えることだと古賀氏は訴える。
 震災発生以前から日本は危機的な状況にあった。財政赤字、長引く経済の停滞、機能不全に陥る政府と1年と持たない政権、少子高齢化に対応できない社会保障等々、日本はいつ政府閉鎖が起きてもおかしくないほど状況は深刻だった。更にその上に、今回の震災の負担がのし掛かってくると古賀氏は危機感を募らせる。
 二度と同じ不幸を繰り返さないために、今われわれが真剣に取り組まなければならないことは何かを、古賀氏と考えた。

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