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2011年03月12日公開

祝島の激突にみる電力会社の非合理と民主党の失敗

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第517回)

完全版視聴について

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ゲスト

1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。92〜06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90〜92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、編著に『自然エネルギー市場』、共著に『日本版グリーン革命で雇用・経済を立て直す』など。

著書

概要

 中国電力は先月21日、上関原子力発電所(山口県)建設のための海面埋め立て工事を、1年3カ月ぶりに再開した。建設予定地の対岸に位置する祝島の漁協をはじめとする反対派住民や全国から集まった若者らは、海上にカヌーや漁船を出すなど抗議活動を行い、工事を強行する中国電の職員らと衝突、けが人も出た。緊迫する祝島にいま、何が起きているのか、飯田哲也氏と神保哲生の現地リポートを交えて、日本のエネルギー政策の問題点と世界の趨勢、なぜ民主党政権がエネルギー政策の転換に失敗したのかを議論した。
 10年前NGO環境エネルギー政策研究所を立ち上げ、一貫して日本のエネルギー政策の転換を求めている飯田哲也氏は、上関原発の建設について「他のあらゆる原発建設計画の中で最も非合理」で、「まったく無意味な原子力施設」と断じる。
 そもそも中国電は「電力余り」で、関西電力などに余剰電力を買い取ってもらっている状態だ。中国電は電力需要量は増えるという計画を根拠に、原発建設が必要と説明しているが、実際には販売電力の実績は年々減っている。今年末には「島根原発3号機」という巨大な原発が完成予定で、その電力ですらまるまる余る可能性がある。今後、中国地方の人口減少とともに電力需要、利益率が下がる中で、上関原発への投資は回収できるのかという根本的な疑問が残る。
 中国電がこのような非合理な経営をできるのは、電力会社が市場を地域独占しているからに他ならないが、飯田氏は各社がおのおのの独占を守るために「暗黙の助け合い」を行うなど事実上の談合組織のような調整を行っている、と明かす。
 中国電が原発建設を強行するもうひとつの理由は、他社に比べて石炭(火力)による発電の割合が高いことにある。CO2排出の比率を各社と横並びに合わせるという、真に馬鹿げた、本末転倒の論理だ。そもそも原発は、リスクをとれる東京電力や関西電力など規模の大きな会社が国の産業政策として進めてきた。弱小電力会社はコストの安い石炭を使わされてきた面がある。こういった産業政策のひずみを考慮せず、中国電が「CO2削減」に背中を押されてしまっている、と飯田氏は指摘する。
 民主党政権は、「2020年までにCO2を25%削減」、排出量取引、地球温暖化対策税、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の導入を09年マニフェストに掲げた。しかし、この政策転換に失敗した原因について飯田氏は、経産大臣に適任者を登用できず、エネルギー族と呼ばれる旧民社党議員や経産省官僚にエネルギー政策の主導権を握られたとみる。
 世界の再生可能エネルギー利用の流れは一層加速している。投資額は年30〜50%の割合で増加しており、ドイツでは政府機関などの複数の団体が「2050年までに自然エネルギーを100%にする」という目標を昨年相次いで出した。アメリカでは、原子力発電によるコストより、太陽光発電のコストが安くなったという研究結果も発表されている。
 祝島の住民は、飯田氏が代表を務める環境エネルギー政策研究所と「祝島自然エネルギー100%プロジェクト」を立ち上げる。デンマークのサムソ島が10年かけて達成したといった先進例にならい、住民が使用するエネルギーをすべて再生可能エネルギーによってまかない、地域の自立を目指す取り組みだという。飯田氏は、原発しか選択肢がないという原発推進派の住民に、そうではない選択肢があるのだと気付いてもらうきっかけにしたい、と話す。
 祝島の漁民は漁業補償金の受け取りを拒み、中国電の原発建設に徹底抗戦する構えだ。地域主権の先行きはどうなるのか。地域からエネルギー政策の転換を試みる飯田氏に、神保哲生と宮台真司が聞いた。

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