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2007年12月22日公開

誰のための教育改革なのか?

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第351回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1944年石川県生まれ。69年早稲田大学政治経済学部卒業後、75年東京大学大学院教育研究所修士課程修了、78年スタンフォード大学教育系大学院修了。名古屋大学助教授、東京大学教育学部助教授を経て、91年、同教授に就任。00年教育改革国民会議委員。05年中央教育審議会義務教育特別部会委員を歴任。03年より現職。著書に「教育改革のゆくえ」、共著「誰のための『教育再生』か」など。

著書

概要

 12月5日、06年に行われた各国の15歳の学習到達度を測るPISA(Programme for International Student Assessment)の結果が発表され、日本は03年に引き続き、順位を落としたことが大きく報じられた。PISAには「科学的リテラシー」、「数学的リテラシー」、「読解力」の3科目があるが、確かに日本はいずれの分野でも順位を落としている。その結果を受けて「国際的にも、日本の学力は低下し続けている」との危機感から、早速「教育再生会議」は、理数系教育の充実をうたう内容を12月末発表の第3次報告案に盛り込むという。
 しかし、各国の教育制度に詳しい教育社会学者の藤田英典氏は、PISAの結果への日本の反応を過剰と指摘する一方で、メディアも教育再生会議も、今回のPISAの結果が示す日本の教育の重大な問題点を見落としていることに懸念を表する。
 例えば、全科目で1位、2位を占めたフィンランドと日本のレベル別の成績を比べると、成績最上位者の割合はほとんど変わらない。少なくとも15歳の段階では、日本にも世界の中でもトップクラスの優秀な子供が多いのだ。しかし、日本が全体としてフィンランドよりも低くランクされている最大の理由は、日本の成績最下位者の割合がフィンランドの倍以上あることだ。つまり、フィンランドの成績の高さは、成績下位者のかさ上げがうまくなされ、全体として成績が高いことであるのに対し、日本はできる子とできない子の差が開いているため、結果的に全体の評価が悪くなっていると藤田氏は指摘する。
 これは、まず日本の教育が直面する課題は、できる子を更に鍛えることよりも、「落ちこぼれ」の手当にあることを示唆していると、藤田氏は言う。
 藤田氏によると、フィンランドは、88年に義務教育課程での習熟度別学習を廃止し、少人数によるグループ学習へと教育政策を転換している。さらに教師の質を向上させ、生徒個々に合わせた細かい指導を行い、落ちこぼれをつくらない体制作りを進めてきたという。一方、日本では、4分の3以上の小中学校でできる子を伸ばすことに力点が置かれた習熟度学習が導入されている。つまり、現在日本が行っている「教育改革」の方向性は、義務教育段階から教育機会を差別化するような内容であり、その意味でもフィンランドなどが行ってきた改革の成功例とは逆の方向に向かっていると藤田氏は語る。
 その他にも、世界の多くの国が日本の教育制度をお手本として改革を進める中、日本は「改革」の名のもとに過去20年の間、むしろその財産を捨てる方向へ邁進していると藤田氏は言う。70年代の受験競争の過熱から「教育の危機」が叫ばれ、臨時教育審議会から、教育改革国民会議、教育再生会議と、次々と日本では「教育改革」が行われてきたが、藤田氏によると、そのかなりの部分が、教育に対する専門的な知識も持たない「識者」とおぼしき人々が、場当たり的な施策を打ち出してきたに過ぎない。
 こうなるとそもそも日本の教育改革が一体誰のためのものだったのかさえ、怪しくなってくる。なぜ日本の教育改革はこのような惨状を続けているのか。日本の教育が必要としている真の改革とは何なのか。
 事ここに至ってもまだ次々と新たな改革案が出される中、「日本は改革のための改革を続けてきた」と憤る藤田氏とともに、教育改革のあり方を根本から考えた。

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