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2007年06月07日公開

なぜ報道被害は無くならないのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第323回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

1943年群馬県生まれ。67年一橋大学法学部卒。71年弁護士登録。『石に泳ぐ魚』事件や『生活ほっとモーニング』事件などの名誉毀損裁判の原告側代理人を務める。04年より山梨学院大学法科大学院教授を兼務。日弁連「人権と報道調査研究特別部会」部会長、共同通信社「報道と読者委員会」委員、国分寺市人権擁護委員、ランビック(報道被害救済弁護士ネットワーク)会員。著書に『報道被害』、『在日外国人』など。

著書

概要

 「報道被害」という言葉が聞かれるようになって久しい。個別の事例としては、事実に反する情報が報道される事件は昔からあったが、近年の報道被害には、夥しい数のメディアによる集団暴力的な色彩が強い点が、明らかに過去の単なる誤報事件とは性格を異にしている。メディア側がなかなか間違いを認めようとしない点も、単純な誤報事件とは大きく異なる点の一つだ。
 一旦メディアスクラムの対象となれば、標的となった本人はもとより、その家族、親戚、隣人などを巻き込んだ大騒動となる。本人の生活は根底から覆され、その社会的地位も人格も全てがボロ布のようにされてしまう。
また、このような著しい報道被害が相次いで発生しているにもかかわらず、加害者となっている報道機関が、自ら進んでその事実を報じないため、一般の市民にはその実態がほとんど知られていないのも、近年の報道被害の特徴と言っていいだろう。
 長年報道被害者の救済活動に取り組んできた弁護士の梓澤和幸氏は、誰もが知るような多くの事件や事故の背後では、人権を無視した報道被害が軒並み発生しているという。そして、中には被害者が自殺に追い込まれたり、精神障害を抱えるところまで追いつめられるケースもあるという。
 それにしても、なぜ報道被害は起きるのだろうか。
 報道被害の原因として梓澤氏は、「過当競争」、「警察との関係」、「情報公開の不徹底」、「メディアの責任意識の欠如」などをあげる。報道機関が裏付けの無いいい加減な情報を報じる際、各社が同じような情報を一斉に報じている限りは「赤信号、みんなで渡れば恐くない」的な心理が働く。仮に報道内容がまちがっていても、全社が一斉に間違えていれば、個々の報道機関や記者一人一人のリスクはほとんど皆無に近くなる。また、被害者側も、一つや二つのメディアならば抗議をしたり法的措置をとることも可能だが、それが10社、20社となると、対応のしようが無い。要は、取材対象をサンドバッグ状態にできれば、メディア側にとっては「やったもん勝ち」状態になるということだ。
 また、桶川ストーカー殺人事件や松本サリン事件に見られるように、報道被害の多くは、警察のリーク情報を報道機関がそのまま報じることで発生しているケースが多い。記者クラブという閉鎖的な取材環境の中で、メディアと警察がズブズブの癒着関係となり、事件報道は、どれだけ警察に食い込んで未発表の捜査情報を引き出せるかの競争となっている。そのため、警察がリークした情報は、裏が取れていなくてもそのまま報じられる場合がほとんどだ。ほぼ100%の有罪率を誇る日本の警察から出た情報なので、メディア側にとってのリスクもほとんど無い上、警察から「頂戴した」情報を報じなければ、警察との良好な関係すら危うくなる。
 一向に報道被害が無くならない状況に対し梓澤氏は、匿名報道の導入を呼びかける。スウェーデンのように、私人を対象とする事件や事故の報道の際は、警察は実名を公表すべきではないという立場だ。匿名にすることで警察のでっち上げや隠蔽のリスクが高まる可能性については、情報公開制度を整備し、弁護士などが求めれば実名の情報が入手できるようにすることで最小化できると梓澤氏は主張する。
 いずれにしても、何らかの対策が急務であることだけは確かだ。報道被害が続く間に、一般市民の間では、国による報道の規制はやむを得ないとの空気が強まっている。むしろそれを歓迎するところまで、メディアに対する世論の風当たりは強い。今後、有形無形の報道規制が導入されることが避けられない状況だ。統治権力にとっては不都合な「自由なメディア」に介入するチャンスを、政府が見逃すはずが無い。
 長年報道被害に取り組んできた梓澤氏とともに、報道被害の実態とその背景、そして考えられる処方箋を議論した。

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