2007年4月19日
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天下りを無くして本当に日本は回るのか

林芳正氏(内閣府副大臣)
マル激トーク・オン・ディマンド 第316回

 官僚の天下り規制を強化する国家公務員法の改正案がまとまった。
 途中自民党や霞ヶ関からの激しい巻き返しにあい、5年後の見直し条項などが盛り込まれるなどまだ予断を許さない状況ではあるが、各省庁による再就職のあっせんを禁止し、人材バンク(官民人材交流センター)に窓口を一元化することが謳われているこの法案が成立すれば、これまでのような省庁の影響力を背景とする国家公務員の天下りはより難しくなると見てよさそうだ。
 しかし、安倍政権内で公務員制度改革を担当してきた林芳正内閣府副大臣は、今回の法案はもともと天下りの禁止を目的としていたわけではなく、行政府に能力・業績主義を導入したり、民間企業との人材交流を促進することで、疲弊した公務員制度全体を活性化させることにその主眼があると言う。天下り規制は、そのほんの一部に過ぎないというのだ。林氏はこれが「天下り禁止法案」と呼ばれ矮小化されたことを残念がる。
 しかし、たとえ矮小化されていたとしても、天下りはこれからの日本の官僚制度をどう位置づけるかの根幹に関わる問題であることはまちがいない。現行の制度では、公務員の賃金は大企業より低めに押さえられており、キャリア官僚たちは役所を辞めた後、特殊法人や民間企業でそれなりの処遇を受けることを前提に生涯賃金を計算している。従来通りの天下りができなくなれば、公務員の報酬全体を上げない限り、行政府に優秀な人材が集まらなくなり、政策の遂行能力が低下する危険性がある。
 また、天下りは競争原理にさらされない役所にあって、人材の入れ替えを活性化する意味合いも含んでいた。天下りが難しくなれば、好条件の企業からの引き合いが無い能力の低い公務員に限って、定年まで役所で無駄に働き続ける人が増える可能性が高まる。これもまた、天下りを禁止する際に十分注意しなければならない副作用だ。
 しかし、いずれにしても、天下り禁止を含め、公務員に対する締め付けを強めれば、官僚主導の行政運営がもたらすさまざまな弊害は緩和されるかもしれないが、その一方で、他に何らかのインセンティブを設けない限り、官僚の質の低下は避けられない。そしてその場合に問題になるのが、政治の質だ。これまでの日本では官僚がしっかりしていたから、政治家は遊んでいても日本は回っていたと言われる。しかし、官僚主導の弊害が顕著になり、日本が官僚主導国家から政治主導国家に移行した場合、果たして今の日本、今の政治家、そして今の有権者のレベルで、本当に日本という国は回っていくのかという問題は、十分直視しておかなければならない。いたずらに官僚制度をいじるだけでは、単に政府の行政処理能力や問題解決能力を低下させてしまうことも十分にあり得るのだ。
 民間の商社やアメリカ議会の議員スタッフを務めた経験を持ち、長年行政改革問題に取り組んできた林氏とともに、今日本の公務員制度をいじる上で考えておかなければならないことは何なのかを、あらためて考えてみた。

林 芳正はやし よしまさ
(内閣府副大臣)
1961年山口生まれ。84年東京大学法学部卒業後、三井物産株式会社に入社。91年に渡米、ウィリアム・ロス上院議員(共和党)のスタッフとして勤務。94年ハーバード大学ケネディ行政大学院修了。95年参院選に山口県選挙区から自民党公認で立候補し初当選。著書に『希望のシナリオ―次世代論客が語る「明日」への突破口』(共著)など。当選参院2回(山口県選挙区)。

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