天皇・皇族の人権のあり方を問いつつ最高裁判決を検証してみた
東京都立大学法学部教授
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安倍晋三首相は2016年6月1日の記者会見で、翌年4月に予定されていた消費税率10%への引き上げを、19年10月まで延期することを表明した。
これを受けてメディア上では消費増税延期の是非がしきりと議論されている。しかし、消費増税の延期という政策的判断の正当性と、それによって根本から崩れる政権の正統性は別次元の問題だ。
消費増税の延期を発表した会見で、安倍首相は自身が増税延期の条件としてきた「リーマンショック級か大震災並」といった状況は起きていないことを認めた上で、「新しい判断」を下したと言明。その信を7月10日の参院選で問うとした。
今回で消費増税の延期は2度目となる。2014年11月18日、法律で決められた2015年10月の消費増税の一度目の延期を発表するにあたり、安倍首相は「再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします。平成29年4月の引き上げについては、景気判断条項を付すことなく確実に実施いたします」と宣言した上で、増税延期の信を問うとして、衆院を解散した。
現在、安倍首相が内閣総理大臣の地位にあるのは、ここで問われた「信」を元に選ばれた衆議院議員によって、首班指名を受けたからだ。その約束を果たすことは、安倍首相が内閣総理大臣でいることの必須条件であり、最低条件となる。
消費増税の是非や、そのタイミングについては、政策論レベルでは様々な意見があるだろう。また、それが政治判断マターであることも否定はしない。しかし、それはその政策の正当性をめぐる議論に過ぎない。その政策をどの政権が実行する資格があるかという政権の正統性とはあくまで別次元の問題である。
無論、政策は水物なので、途中から変更されることはいくらでもあるだろう。常に最適なタイミングで最適な政策が打たれて然るべきだ。また、公約違反とて、過去の政権にはつきものだった。選挙公約をすべて果たせるわけではないことも当然理解する。しかし、二度と増税時期を変更しないことを約束して信を問い首相になった内閣総理大臣が、その約束を反故にするというのであれば、これは単なる政策変更や公約不履行の類ではない。政権の正統性の根幹に関わる問題であり、首相は改めて信を問わなければならない。
首相は首相自らが断言して行った公約を変更することの政治責任の取り方として、参院選挙で信を問うとして、勝敗ラインを自民・公明両党で改選議席の半数とした。自ら勝敗ラインにまで言及したことは評価に値する。しかし、参院選挙ではその後の国会で再度、首班指名は行われない。自ら身を引くか、与党内から造反で出ない以上、首相の座は安泰なのだ。
そもそも首相が会見で示した「新しい判断」とは何なのか。不人気な増税を先延ばしにすることで参院選に勝利し、憲法改正の実現を最優先することが「新しい判断」の中身なのか。国のトップがあからさまに約束を反故にすることによって、その国は何を失うのか。首相の「新しい判断」による正統性の喪失と、それが厳しく問われない日本の民主主義の現状について、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。