2015年07月11日公開

「結婚は個人の尊厳に関わる基本的な権利」

米最高裁の同性婚合憲判断の法理を読み解く

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ゲスト

1980年神奈川県生まれ。2003年東京大学法学部卒業。同大学法学政治学研究科助手、首都大学東京都市教養学部准教授を経て16年より現職。著書に『憲法の急所─権利論を組み立てる』、『自衛隊と憲法─これからの改憲論議のために』など。

著書

概要

 結婚は個人の自律と尊厳に関わる基本的な権利。同性というだけでこれを認めないことは、憲法の平等原則に反する。

最高裁判所が6月26日、すべての州で同性同士の結婚を正式な婚姻と認める判断を言い渡して以来、アメリカでは同性婚カップルの結婚ラッシュが起きているという。

 それまでも全米50州のうち37州とワシントン特別区(DC)では法的に同性婚が認められていたが、残る13の州では同性婚は禁じられていた。

 この日の判決でオハイオ、ミシガン、ケンタッキー、テネシーの4つの州の同性婚を禁じる州法が違憲と判断されたことで、アメリカでは全州が同性婚を法的に認めることが義務づけられることになった。

 最高裁は9人の判事のうち5人が、州法で同性婚を禁じることは、法の正当な手続き(Due Process of Law)によらずに、いかなる個人の生命、自由または財産を奪ってはならないことを定めた合衆国憲法第14修正条項に違反するとものと判断した。

 また、5対4の僅差の判断の中で、多数意見は同性カップルの子供に害を及ぼす恐れがあることも、同性婚を法的に認めるべき理由としてあげた。

 一方、同性婚の合法化に反対する少数意見側についた保守派のアリトー判事は、憲法のデュープロセス条項における「自由」は「この国の歴史と伝統に深く根ざした権利のみを保障していると解されるべき」として、同性婚はこれに当たらないとの考えを示した。

 同じく少数意見側についた保守派のスカリア判事は、合衆国憲法が保障する自由と尊厳は「国家による侵害から護られる権利であり、国家によって与えられるべきものではない」として、最高裁が同性婚の自由を保障することに抵抗感を露わにした。

 この判決の後、日本でも7月7日、同性婚を希望する455人が、同性同士の結婚が認められないのは法の下の平等を保障する憲法に反しているとして、日弁連に人権救済を求める申し立てを行うなど、近々、日本でも同性婚の合法性が問われる裁判が行われる可能性が高い。しかし、日本ではまだ、ようやく非嫡出子の相続差別が違憲と判断されたところで、選択的夫婦別姓さえ認められないなど、憲法が保障する自由や平等を婚姻に適用することに対して、裁判所は至って消極的だ。

 米最高裁はどのような法理をもって、同性婚を合憲と判断したのか。日本にも影響を及ぼし得る米最高裁の歴史的判断の背景について、憲法学者の木村草太とジャーナリストの神保哲生が議論した。

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